「こっちだ」
お兄ちゃんの声が聞こえた気がした。
私は走り出す。
お兄ちゃんが最後に目撃された森の中は鬱蒼としていて、気味が悪くって、頑張って捜索を続けていたけどもう今日は帰ろうだなんて弱気になっていた時にその声は聞こえた。
「おっ、おにいちゃん、どこ、どこなの!」
ガサガサと茂みを掻き分けて声の出処を探す。葉っぱが手にちくちくと刺さって痛かったけれど気にならなかった。お兄ちゃんが居なくなってからお母さんが笑わなくなったことの方がずっと痛かった。
絶対にお兄ちゃんを見つけるんだ、私はぐっと決意を固めて、茂みの奥へ飛び出して──!
真っ逆さまに落ちていった。
「……?」
そらがみえる。
どうして……? 何がどうなったの……? なんだか………………………………いたい……………………………………。
「おにいちゃあ……どこに、いるの……」
どこに
どこに、どこに、どこに、どこに、どこに、どこに、どこに、どこに、どこに、どこに、どこに、どこに、どこに、どこに、どこに、どこに、どこに、どこに、どこに、どこに、どこに、どこに、どこに、どこに、どこに、どこに、どこに、どこに、どこに、どこに、どこに、どこに、どこに、どこに、どこに、どこに、ど
「こっちだ」
君の声がする
「みんながいてくれて良かった。あのね、──。」
いちばん努力したのも、誰より傷ついたのも、得たものと同じくらい失ったのもあんたのに。
なのに、あんたがそんな顔でそんなことを言うのはずるいだろ。
あぁ、もう……
「こっちのセリフだっっっ、バーーーーーーーーーカ!!!!!!!!!!!」
ありがとう
よく晴れてて気持ちのいい風が吹いていた。気温も低くも高くもなく、ちょうどいいあたたかさ。外を見れば真っ白な雲がゆったりと散歩をしているけれど、お日様は僕達を優しく照らしてくれていた。今日は洗濯物がよく乾きそうだ。
そう、今日は何もかもが心地よくて……なんというか、気持ちが良かった。満たされていた。
これで横にあの子がいてくれたりしたら堪らないほど幸せなのだけど、なんということだろう。どういった奇跡か、僕の隣には既にあの子が擦り寄ってきている。ふわふわの毛並みを僕に一生懸命押し付けて、「撫でろ」と全身で伝えてきていて。
背中をなぞる様に撫でてやれば、ごろんと転がりお腹を見せて、ぐいっと伸びをする。
その姿を見て満たされたものが溢れた時に、ポロッと出てきた幸せを、僕はどうせならかわいいこの子に送ることにしたんだ。
「……あいしてる」
そっと伝えたい
希望を届けよう、光を届けよう。
きっと大丈夫だって伝えるよ、きっと夢は叶うって抱きしめるよ。
こけてしまったってかまわない、辛くたってかまわない。
もっと、もっと、もっともっと高くまで、遠くまで……
遠いところにいるきみのところまで、私が照らしてみせるから!
遠く....
「それにしても、あの身近な者にしか気を許さず、例外なく私にも冷えた目を向けてくれたお嬢様がまさかただ人見知りをしていただけだったとは……。
誰も知らない秘め事を打ち明けてもらえるなんて、至上の幸福だな。」
「常にそのくらいの気持ちでいてもらわなければ困りますわっ! だって貴方はこの私のメイドなのですもの!!」
「お嬢様、伝わらなかったか? 今私は嫌味を言ったんだ。……人前じゃ明日の天気だって話せないのに学園で友達百人は作るって? はぁ〜、困ったお方だね。」
「困っているのになぜ笑っているの?」
「今のは面白い仕事になってきたな〜って意味だよ、お嬢様。」
誰も知らない秘密