もし好きな人を例えるなら、ブラックコーヒーだと思う。
よく映える茶髪、似合う秋服と眼鏡、完全に私好みの服装。
当の本人はコーヒーは飲めないと苦笑してきたけれど、
それでもあまりに、喫茶店で唯一綺麗に穏やかに微笑む顔に
惹かれてしまっていて。
彼に反して私はブラックコーヒーが好き。
苦味と香ばしさ、そして勝手に甘くなる口の中を元に戻してくれるような気がするから、好きなのだ。
この温かなコーヒーが冷めないうちに、彼に私の本心を、
伝えられるような日が来たら嬉しく思う。
毎日、時計の針が重なって日付が変わるたびに
今日もメッセージは来なかったと落胆する。
誘われ待ち、というのも理解してるけど、どうしても向こうから
連絡の一報くらいくれても良いんじゃないか、と期待してしまう。
私ばかり好きで、どうしようもないくらい焦がれて、
勝手に一喜一憂して…って考えると、辛いよね
あーもー!早く会いたいよ!
俺も会いたいとか、お出かけしよ!くらい言ってこいよ!
腹立つけど、大好き!!!!
貴方もこれくらい、私のことを時計の針が真上で重なるまで
想ってくれることを心から願います。
偶々、お互いが暇だっただけ。
社交辞令として「暇な日に出かけませんか?」と聞けば、
まさかの当日にお出かけが決まってしまった。
「涼しくなってきたし、一緒に海行かない?」
そんな通知に跳ねる心臓。
わざわざ家まで迎えにきてくれる優しさを知ってしまい、
ずっと曖昧な気持ちに名前が付いてしまった。
恥ずかしくも、毎日連絡が来ないか待つ日々が来るのだと思うと苦しく、そして嬉しく思う。
「さよなら」を言わないでほしい。
せっかくこの広い世界、広い日本という島国で出会えたのだから。そんな、もう2度とこの先会えないような言葉を言わないでほしい。
そう願っても、自分から離れた方が良いという決断をすべき日も来てしまう。
仕方ないと思っていても、どこか寂しいと感じてしまうのは、やっぱり相手と私の感情の差があったからだろうなぁ。
一人暮らしでまさかの病気。
自分以外だれも居ない部屋で響くスマホの音。
「大丈夫!?病院行ったの?」
「欲しいもの無い?送るから言ってね。」
「今の体調はどう??」
何度も送られてくるメッセージ。
喋るのも返信するのもしんどく、正直に言うと面倒くさいという感情がふつふつと湧き上がってくるが、それでも心配そうな母の顔も容易に浮かぶ。
何とかスマホに手を伸ばし、今は「大丈夫」だと返信をする。
前まで看病してくれた人と、こんなにも物理的な距離が空くと寂しいものなのか。なんて問い掛けながら、息苦しい中でひとり、眠りにおちる。