紅葉の季節になった。つまり焼き芋の季節だ。
この時期は彼女と別れた時期だからあまり好きでは無い。
丁度デートに来ていたもみじの綺麗な公園で。なんの前触れもなく別れを告げられ追いかける前に彼女は去って行ってしまった。
もみじがよく落ちる木が近くにあった。そのもみじは置いてかれた僕を慰めてくれているような気がして、ほんの少し気持ちが軽くなった。
また、落ち葉が落ち始める。
何故か目に涙がたまる。
『哀愁そそる』
うむ、鏡の中の自分は今日も美しい。
高い鼻、キレのある目、乾燥のないうるうるの唇、シュッとした輪郭、ふさふさの髪
「なんて完璧なフェイス!!まさにビューティフォー!!!!!」
この顔も全ては世界のためだ。
なんてたってこの顔がなきゃ世界の活気が全て消え失せてしまう。
なんて罪な男、オレ!!
『鏡の中の自分』
彼女が眠りにつく前に、僕は時計と彼女の様子をしっかりと見る。
顔色は平常か、いつもと違う行動をとっていないか、などなど。
もし彼女に異変があればしっかりと空調管理などしなければならない。
それは恋人である僕の当然の役目だ。
今日は昨日より12分23秒遅い23時57分36秒に寝るらしい。
僕はまだ寝ない。リアルタイムで彼女の生活を見て一緒に暮らしている気分でいたいから。
おやすみ、とモニター越しに彼女に微笑みながら挨拶する。
モニター越しの彼女は僕になんて目もくれずベッドに入ってアラームを設定している。そんな事しなくても僕に頼ってくれれば起こしに行くのに。
アラームなんかに頼るのが少し腹立たしいけどまぁ仕方ない。
彼女がいい夢を見られますように。
『眠りにつく前に』
お前なんて死んでしまえ、永遠に。
死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね
死んでしまえばいいのに。
この憎悪は山よりはるかに高く海より深く恋情より熱い。
こんな思いがどこから湧くのかなんてわかりきっている。
でも理由なんて要らないほどお前が憎い。
憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くてたまらない。
この重くて強い思いは永遠だ。
私が死ぬまで恨んでやる。
私が死んでも恨んでやる。
大っ嫌いなお前も大っ嫌いなお前を産んだ世界も嫌いだ嫌いだ嫌いだ嫌いだ!!
死ね、みんな死ね。
そして私も死ね。
『永遠に』
突然黒服のガタイのいい男達に担がれ車に乗せられ眠らされて変な所へやってきた。私を連れてきた男達は私を置き去りにするとそそくさとどこかへ消えていた。
そこは本当に変なところだ。変としか言いようがない。
どうやらここは無人島っぽい。
前に見える景色は森だけ。後ろに見える景色は青い海1色。かめいたりしないかな。
とか思いながらぼーっと海を眺めてたら海からかめが出てきた。
そこそこ大きいかめでちょうど浦島太郎が乗っていったようなかめ。
すごく可愛い。
かめは好きだけど知識はなかったので遠くから眺めていたのだけれどかめが私の近くに寄ってきて、
「やあお嬢さん、ここで出会ったのは何かの縁だ。理想郷に連れて行ってあげよう。」
とイケおじボイスで私に話しかけてきた。
かめがイケおじボイス喋ったことと理想郷とかの意味が脳内で簡単に処理できず混乱する。
「り、理想郷…?」
私は聞く。
「ええ、理想郷です。あなたにとっての理想郷でしょう。」
かめが答える。
「さあ、行きましょう?私の甲羅に乗ればすぐにでも連れて行ってあげましょう。」
言われるがまま全体重はかけないようにそっと甲羅にのる。
「ありがとうございます。では、出発です。」
そして私は理想郷へと向かったのだった──
『理想郷』