ミヤ

Open App
10/2/2025, 7:28:07 AM

"秋の訪れ"

街中で金木犀の香りが流れてきたら、時間があったらつい花を探して歩き回ってしまう。

昔、扉を開けるなり、"良い香りがする"と貴女が至近距離まで寄ってきてびっくりしたことがあったっけ。
結局、上着のフードに紛れていた金木犀の花が原因だったんだけど。
真剣な顔でふんふんと鼻を近づける様子は猫みたいで、物凄く癒された記憶がある。

10/1/2025, 6:03:57 AM

"旅は続く"

デスマーチはまだまだ続く……。
今の仕事がひと段落したら、闇に消えていくばかりの有給休暇をもぎ取って旅に出るんだ、僕……。
ああでも状況的に多分無理そうだなぁ……。

知ってる?有給休暇はね、付与されて二年間で時効をむかえて消滅するんだよ……。
今までどれほどの有休が人知れず葬られていったことか……。

9/28/2025, 4:34:06 AM

"涙の理由"

涙の理由?
そんなの、心が耐えられないと叫んでいるからだろ。
正しく人間って感じがするよな。


みんな、泣いてた。
その様を、ただ、ぼんやり眺めていた。

あの夜、零れ落ちた言葉を覚えている。
僕を見ながら、僕じゃない誰かを見ていたその瞳を覚えている。
悲痛を、悲嘆を、絶望を浮かべたその色を忘れられない。

ねぇ、なんで
必要とされていた彼女が死んで、
要らない僕が生きてるの。

声ひとつ、涙一粒さえ落とせず、ただ周りの人達の嘆きを聞くばかりの何も無い自分が心底呪わしかった。

9/26/2025, 5:35:08 AM

"パラレルワールド"

今この世界に自分が一人いるだけでも多すぎると思うのに、さらに並行世界の数だけ無数の自分がいるなんて考えるとゾッとする。
精神衛生上、あんまり考えたくないなぁ。

でも、貴女が元気に笑っている世界線は何処かにあってほしいと思うんだよな。

9/25/2025, 3:05:47 AM

"僕と一緒に"
"時計の針が重なって"

記念日には毎年花束を購入する。
お陰で、花屋の店主とはすっかり顔見知りになってしまった。
毎回の冷やかしの言葉を軽くかわして、受け取った花束に頬を緩める。
色とりどりの、繊細で複雑な色合いのさまざまな花々。
花束の彼女によろしく、とニヤニヤしながら言う店主に苦笑して、店を出た。

花屋の店主には貴女のことを伝えていない。
今後も明かすつもりは無い。
お決まりの弔花よりも、幸せや喜びを思って作ってくれる花束の方が良いだろう?


"『ずっと』や『一生』でまとめないで。
毎年、ちゃんと言葉を頂戴"と貴女は望んだ。
だから記念日にはいつも、
"次の一年も僕と一緒にいて下さい"と、言葉と花束を贈った。
嬉しそうに頷いて花束を抱きしめる、貴女のその笑顔が好きだった。


時計の針が重なって、
今年もまた貴女との記念日を迎えた。
写真の中で笑う貴女に、花束と共に約束の言葉を贈る。
少しだけ形を変えた、誓いの言葉。
これから先も、僕が生きている限り、一年の約束を何度だって貴女に捧げ続ける。

Next