"僕と一緒に"
"時計の針が重なって"
記念日には毎年花束を購入する。
お陰で、花屋の店主とはすっかり顔見知りになってしまった。
毎回の冷やかしの言葉を軽くかわして、受け取った花束に頬を緩める。
色とりどりの、繊細で複雑な色合いのさまざまな花々。
花束の彼女によろしく、とニヤニヤしながら言う店主に苦笑して、店を出た。
花屋の店主には貴女のことを伝えていない。
今後も明かすつもりは無い。
お決まりの弔花よりも、幸せや喜びを思って作ってくれる花束の方が良いだろう?
"『ずっと』や『一生』でまとめないで。
毎年、ちゃんと言葉を頂戴"と貴女は望んだ。
だから記念日にはいつも、
"次の一年も僕と一緒にいて下さい"と、言葉と花束を贈った。
嬉しそうに頷いて花束を抱きしめる、貴女のその笑顔が好きだった。
時計の針が重なって、
今年もまた貴女との記念日を迎えた。
写真の中で笑う貴女に、花束と共に約束の言葉を贈る。
少しだけ形を変えた、誓いの言葉。
これから先も、僕が生きている限り、一年の約束を何度だって貴女に捧げ続ける。
9/25/2025, 3:05:47 AM