"小さな愛"
奥様方の井戸端会議だとか、男連中の寄り合いだとか。
結構明け透けに個人の情報を話したり、勝手な持論や想像で面白おかしく話を盛り上げたりする。
いきなり近所に現れた子供なんかは噂話の格好の的だったわけで。
お茶出しを手伝っている時に、襖の向こう側から自分の話が聞こえてくると気まずいんだよなぁ。
たまに、大人としての義務感なのか、それとも罪悪感なのかは分からないけど、しゃがみ込んで耳を塞いでくれる人がいた。
あんまり意味は無かったけど。
普通に聞こえていたし。
慣れているから今更なんとも思わないし、あなたも以前別の場所で似たようなことを言っていましたよね、とは思いはしたけど。
でもまぁ、なんだか泣きそうな顔をしていたから。
何も言わず聞こえないふりをして、笑って頭を撫でてあげたのです。
"空はこんなにも"
遅い昼食を終えて、ふと見上げた空はこんなにも青く澄み渡っているのに。
それなのになぜ帰宅予定時刻は日が完全に落ち切った後なんだろう。
人生の不条理を感じてしまう。
こういう些細な事が積み重なって、世の中を憎む人間が出来上がっていくんだろうなぁ。
"子供の頃の夢"
耐え切れない絶望に一瞬にして押し潰されるのと。
少しずつ、諦めによって擦り切れていくのと。
一体どちらがマシなんだろうか。
"どこにも行かないで"
何処へ行くと言うんだろう。
ここ以外に行く場所なんて無いのに。
足枷も
針の畳も
強固な檻も無くたって。
どこにも行けないこと、わかっているだろうに。
"君の背中を追って"
揺れる尻尾と君の背中を追って、
たどり着いたのはひんやりとした路地裏。
猫って涼しい場所を知っているよね。
まぁ、この暑さの中で毛皮を着ているんだもんなぁ。
ペタリと地面に座った写真を一枚、ゴロンと横になった写真を一枚。
日陰から見る炎天下の道はいかにも暑そうで。
君はこの涼しい場所から、直射日光に晒されながら行き交う人々を哀れな生き物だと眺めているんだろうか。