"子供の頃の夢"
耐え切れない絶望に一瞬にして押し潰されるのと。
少しずつ、諦めによって擦り切れていくのと。
一体どちらがマシなんだろうか。
"どこにも行かないで"
何処へ行くと言うんだろう。
ここ以外に行く場所なんて無いのに。
足枷も
針の畳も
強固な檻も無くたって。
どこにも行けないこと、わかっているだろうに。
"君の背中を追って"
揺れる尻尾と君の背中を追って、
たどり着いたのはひんやりとした路地裏。
猫って涼しい場所を知っているよね。
まぁ、この暑さの中で毛皮を着ているんだもんなぁ。
ペタリと地面に座った写真を一枚、ゴロンと横になった写真を一枚。
日陰から見る炎天下の道はいかにも暑そうで。
君はこの涼しい場所から、直射日光に晒されながら行き交う人々を哀れな生き物だと眺めているんだろうか。
"好き、嫌い、"
好きと嫌いの二つで分けてしまうと、この世の殆どが嫌いに分類されてどうにもならなくなってしまう。
だから一時保留のボックスを作って、大抵の物事をそこに放り込む。
好き、嫌い、その他保留。
もしくは決済・承認待ち、コールドケースでもいい。
はっきり白黒つけなくても、灰色のままでも十分日々を生きていける。
"雨の香り、涙の跡"
祖母は優しい人だった。
ただ時折、僕の顔を見てほとほとと涙を零すのは正直参った。
泣き疲れて眠ってしまった祖母に毛布をかけ、
頬に残る涙の跡を指でなぞる。
どうして、なんで、と繰り返す悲痛な声が、ずっと耳に残って離れない。
なんて声をかければ良かったんだろう。
ここに居るのが彼女じゃなくてごめんなさい?
あなた方から彼女を奪ってしまってすみません?
生まれてきて申し訳ありません?
そのどれもが正解で、どれもが正しくないように感じて、結局いつも何も口に出来ないまま。
窓の外は暗く、強い風が吹きつけていた。
硝子に映る人形のような空っぽの瞳から目を背けて、電灯をパチンと落とす。
一瞬チカリと閃いた稲光。
遅れて響く雷鳴は、間も無く雨を連れてくる。