ミヤ

Open App

"雨の香り、涙の跡"

祖母は優しい人だった。
ただ時折、僕の顔を見てほとほとと涙を零すのは正直参った。

泣き疲れて眠ってしまった祖母に毛布をかけ、
頬に残る涙の跡を指でなぞる。
どうして、なんで、と繰り返す悲痛な声が、ずっと耳に残って離れない。
なんて声をかければ良かったんだろう。
ここに居るのが彼女じゃなくてごめんなさい?
あなた方から彼女を奪ってしまってすみません?
生まれてきて申し訳ありません?
そのどれもが正解で、どれもが正しくないように感じて、結局いつも何も口に出来ないまま。

窓の外は暗く、強い風が吹きつけていた。
硝子に映る人形のような空っぽの瞳から目を背けて、電灯をパチンと落とす。

一瞬チカリと閃いた稲光。
遅れて響く雷鳴は、間も無く雨を連れてくる。

6/20/2025, 4:58:39 AM