"風景"
昔々の春の一幕。
猛スピードで後方に流れていく風景。
人も建物も、過ぎゆく全てが等しく溶けて混ざり合う視界の中、僕の手を引くたった一人だけが鮮明で。
真っ直ぐに突き進む矢のように、曖昧な世界を切り拓いていく背中を眩しく思った。
不意にぴたりと止まり、手が離される。
急な停止に眩んだ目を数度瞬くと、そこには。
桜降る並木道の真ん中で、手を広げて幸せそうに笑う貴女がいた。
"君と僕"
君と僕は違うからと、ひび割れてしまうことがあるともう知っている。
そうだね。
むしろ、何が一緒なのかな。
同じ物を視れず、
同じ物を聴けず、
同じ物を共有できないのなら。
それはもはや、違うモノだろうに。
"夢へ!"
ゲーテの格言で、"その夢を失くして、生きてゆけるかどうかで考えなさい"というものがあった気がする。
人生全部を賭けられる夢があると、人でも創作物でも、なんと言うか、熱量が違うんだよな。
自分にはない熱だからこそ見ていて面白いと思う。
"元気かな"
"元気かな"と聞かれたら"元気です"と返すし、
"大丈夫かな"と問われたら"大丈夫です"と答えてしまう。話し甲斐のない奴だと自分でも思う。
だって、元気じゃない、大丈夫じゃないと言っても何にもならないじゃん。
具体的な解決策を提示される訳でもあるまいし、
下手な同情なら時間の無駄だからいらない。
体裁上必要な事なのかもしれないけど、いちいち顔色を窺われるのは正直面倒だと思ってしまう。
"遠い約束"
大抵の場合、約束は一方的に破られる。
仕方無いね。だって僕に価値なんて無いんだから。
守らなければならないもの。
壊してはいけないもの。
大切だと定義付けたのは、そちらだったはずなのにね。
ねぇ、どうして僕がそれでも君を尊重すると思ったの?
なんで僕が、僕をいらないというモノを慮らないといけないんだろうか。
やっぱり他人が考えることはよく分からないや。