ミヤ

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3/30/2025, 5:54:19 PM

"春風とともに"

英国の諺に、天気に関するものがある。
"March comes in like a lion and goes out like a lamb. (三月はライオンのようにやってきて、子羊のように去っていく)"

今年はまさにそんな感じだなぁ。
初旬はまだ風が冷たく荒れた天候だったけど、月末には穏やかな春の陽気になった。
各所で桜の開花がニュースになっている。
近所の桜並木は見頃まであともう少しかな。

今月も残すところあと一日。
穏やかな春風とともに三月が去っていき、
また新たな月がやってくる。

3/29/2025, 4:53:11 PM

"涙"

君は泣き方が綺麗だね、と言われたことがある。
音もなく、ただ静かに涙だけが伝い落ちる。まるで無声映画や芝居みたいだ、と。
皮肉だなぁ。

声を上げて泣ける人や、大きな音で騒げる人はすごいなぁと思う。僕には出来ないや。
きっと、音を立てることを咎められた事が無いんだろうね。
息を殺して、顔色をうかがって、音に怯えて過ごした事が無いんだろうね。

幼い頃の記憶はいつまでも残る。
大きな音を出そうとすると、その度に静かにするよう水に沈められた記憶が脳裏を過ぎり、一瞬息が詰まる。
大きな声で笑ってみたかった。
思い切り泣いてみたかった。
自由に声を出せる人が羨ましかった。
だから以前は、笑い声も泣き声も、それを出せる人間も大嫌いだった。


音を出しても大丈夫なんだと貴女に教えてもらって、もう随分が経つ。
それでも未だ、音を立てないよう行動する癖が抜けない自分がいるんだから、呆れてしまうよね。

3/28/2025, 4:23:48 PM

"小さな幸せ"

今日も忙しかった。
最近、一番最初に出勤して、一番最後に職場を出る日々が続いている。
窓の外の真っ暗な空を見上げて、溜め息を吐いた。

外に出てすぐ、冷たい風に首を竦める。
今日から薄手のコートに替えたのだけれど、まだ早かったかもしれない。
ポケットを探ると、未使用の使い捨てカイロが入っていた。昨年、コートを仕舞う時に取り出し忘れていたものだろう。
有り難く封を切り、軽く振って右ポケットに入れると間も無くじんわりとした温かさが伝わってきた。
更に自販機でホットの缶コーヒーを購入し、反対側のポケットに入れると最強だ。
温かいのは幸せな気分になる。

ぬくぬくと温かさを享受しながら、のんびり夜道を歩く。何処からか漂う沈丁花の香りに、やはりもう春が来ているんだなぁ、と思ったり。
さっと視界を横切る猫の姿にほっこりしたり。
忙しいと心が加速度的に荒んでいくから、ちょっとした事にも癒しや楽しみを見つけて少しでも回復しないとやっていけないよ、本当に。

ちなみに明日も一日中仕事だ。
明日というか、もう今日の話か。
…春休み、欲しいなぁ。

3/27/2025, 4:20:07 PM

"春爛漫"

祖父母は町内活動に積極的な人達で、人手が要る清掃なんかには僕も駆り出された。
仲間内で楽しく喋りながらワイワイ作業する祖父母の側にはなんとなく居づらくて。
大きな竹箒を持って、少し離れた並木道の方に行って落ち葉や花びらなんかを集めるのを専ら自分の役目としていた。当時、自分の身長と同じくらいの箒は扱いに苦労したなぁ。

折しも季節は春爛漫、桜花舞い散る最盛期。
掃いても掃いても降り積もる花びらに辟易としていた時だった。

急にドサッと花びらが落ちてきて、視界が白く染まった。

ああいう時って本当に思考が止まるんだよな。
驚いて暫く固まってしまった。
ようやく硬直が解けて樹の後ろにまわり込むと、女の子が足を押さえて蹲っていた。
後から聞いた話だと、親と喧嘩して家を飛び出したものの、苛々がおさまらず、八つ当たりで思い切り樹を蹴ったらしい。罰が当たったんだ、と捻挫した足首を抱えて涙目になっていた。

顔を知っている大人が沢山集まっている所には行きたくない、どうせ嫌な噂話ばっかり広められる、と言うから、その場で簡単な手当をした。幸い清掃活動中だったから、水も布も添木になる棒も簡単に手に入ったからね。
ちゃんと医者に診てもらうように言って別れたけど、あの様子だと多分病院には行かないだろうなと薄々思っていた。

後日、意外と近くに住んでいたその子は、案の定、怪我をそのまま放置して足を腫らしていた。問答無用で病院に連れて行く、はずが物凄く抵抗されたので妥協して、通っていた学校の保健室で湿布を貼って貰った。保健医の先生が、また君か、と呆れた顔をしていたのが印象的だった。



まぁそれが貴女だったんだけどね。
確かにその時の僕より背は高かったけど、完全に病院嫌いの幼い子供ってイメージが強かったから、まさか幾つも上の先輩だとは思わなかったなぁ。

3/26/2025, 5:10:21 PM

"七色"

疲れた時は音楽を聞くに限る。
ぼうっと音楽を聞いていると、ただただ綺麗だなぁ、と思う。
様々な色が連なり、バラバラに離れ、クルクル回って弧を描く。鋭く尖り、弾けて、ふんわり柔らかく目の前を埋め尽くす。冷たさも、温かさも、全部が内包された鮮やかな色彩で表現される世界。

幼い頃は色聴が普通だと思っていたから、口に出した時に嘘吐きだと言われて困惑した覚えがある。
でもなぁ。勝手に想起されるものは仕方無いじゃん。
今は気に入っている。
音を聞いて、七色どころじゃない色に溢れた世界を感じられるのはお得感があるよね。

まぁ普段は煩わしい事も多いけど。
人が多い場所だったり騒がしい場所だったりすると、ほんと酔うから。見ているものが正しい色かどうかも分からなくなるし。だから自分の感覚は信用できないんだよな。

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