ミヤ

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"春爛漫"

祖父母は町内活動に積極的な人達で、人手が要る清掃なんかには僕も駆り出された。
仲間内で楽しく喋りながらワイワイ作業する祖父母の側にはなんとなく居づらくて。
大きな竹箒を持って、少し離れた並木道の方に行って落ち葉や花びらなんかを集めるのを専ら自分の役目としていた。当時、自分の身長と同じくらいの箒は扱いに苦労したなぁ。

折しも季節は春爛漫、桜花舞い散る最盛期。
掃いても掃いても降り積もる花びらに辟易としていた時だった。

急にドサッと花びらが落ちてきて、視界が白く染まった。

ああいう時って本当に思考が止まるんだよな。
驚いて暫く固まってしまった。
ようやく硬直が解けて樹の後ろにまわり込むと、女の子が足を押さえて蹲っていた。
後から聞いた話だと、親と喧嘩して家を飛び出したものの、苛々がおさまらず、八つ当たりで思い切り樹を蹴ったらしい。罰が当たったんだ、と捻挫した足首を抱えて涙目になっていた。

顔を知っている大人が沢山集まっている所には行きたくない、どうせ嫌な噂話ばっかり広められる、と言うから、その場で簡単な手当をした。幸い清掃活動中だったから、水も布も添木になる棒も簡単に手に入ったからね。
ちゃんと医者に診てもらうように言って別れたけど、あの様子だと多分病院には行かないだろうなと薄々思っていた。

後日、意外と近くに住んでいたその子は、案の定、怪我をそのまま放置して足を腫らしていた。問答無用で病院に連れて行く、はずが物凄く抵抗されたので妥協して、通っていた学校の保健室で湿布を貼って貰った。保健医の先生が、また君か、と呆れた顔をしていたのが印象的だった。



まぁそれが貴女だったんだけどね。
確かにその時の僕より背は高かったけど、完全に病院嫌いの幼い子供ってイメージが強かったから、まさか幾つも上の先輩だとは思わなかったなぁ。

3/27/2025, 4:20:07 PM