「どうして。どうして。」と何度も壊れたラジオの様に、言葉を反復させながら、目に涙を浮かべる。
なにをどうしたらいいのか分からない。だか、一つだけ分かることがある。私は無力だということだ。
幼い頃から、私は無力であった。世のため人のためと思いしたことが、全て裏目に出て無駄になる。そうしていつも、「向こうへ行って遊んでいなさい。」と両親に言われるまでがセットであった。
私にはそれが苦痛だった。周りに出来て私に出来ない事があること。遠回しに私が邪魔だと言われていることが。苦痛であると同時に、不愉快でもあった。
数十年後、私は一般企業に就職し、業務に毎日励んだ。だがここでも私のする事なす事は無駄になった。
企画書や取引先への資料等、私が担当した物は必ず上司から指摘が入る。ここがどうだのこっちがああだの。私は最適解を出したつもりだった。それを根から否定された気分になった。
その後、私は探偵事務所に再就職した。ここなら、私の「正義」が通じると思ったから。
結果から言うと、私は出来損ないだと身に染みた。
依頼者の女性の浮気調査で、旦那の浮気を調査する所が、こちらが訴えられることになってしまった。
私が調査中、要らない正義感で暴走してしまったせいだ。
どこで間違ってしまったのだろう。どうしてこうなってしまったのだろう。
どうして、私は無力なのだろう。
皆で暖かい食事を食べ、園芸をしたり読書をしたり。たまにイタズラして一緒に怒られて。皆で寝る前にベッドで内緒話をして。そんな幸せな生活を夢見ていた。
でも、現実は冷たかった。生臭いゴミを漁り、誰かの食べかけにすがる。自分の顔が載った新聞を見て、逃げる毎日。ボロボロの布で、草むらで丸まって寝る。
夢見た生活とは真逆の生活。そんな生活に嫌気が差す時もある。
入っていた施設で、元入居者が無理心中をした。皆冷たくなってしまったが、一人残された。
騒ぎを聞いた大人が駆けつけた。皆、自分が起こした殺人だと信じて止まなかった。何故なら泣かなかったから。
泣かなかっただけで、首謀者にされた。この閉鎖的な村では、目撃したものが全てになる。そうして自分は「殺人鬼」となった。
それから、肺が痛くなる程走った。自分が今何処に居るのかも分からない程走った。
ただ皆で楽しく生きてただけなのに。ただ幸せに生きてただけなのに。
今はただ、夢を見ていたい。幸せだったあの日々を。暖かかったあの頃を。冷たい今を誤魔化すように。