皆で暖かい食事を食べ、園芸をしたり読書をしたり。たまにイタズラして一緒に怒られて。皆で寝る前にベッドで内緒話をして。そんな幸せな生活を夢見ていた。
でも、現実は冷たかった。生臭いゴミを漁り、誰かの食べかけにすがる。自分の顔が載った新聞を見て、逃げる毎日。ボロボロの布で、草むらで丸まって寝る。
夢見た生活とは真逆の生活。そんな生活に嫌気が差す時もある。
入っていた施設で、元入居者が無理心中をした。皆冷たくなってしまったが、一人残された。
騒ぎを聞いた大人が駆けつけた。皆、自分が起こした殺人だと信じて止まなかった。何故なら泣かなかったから。
泣かなかっただけで、首謀者にされた。この閉鎖的な村では、目撃したものが全てになる。そうして自分は「殺人鬼」となった。
それから、肺が痛くなる程走った。自分が今何処に居るのかも分からない程走った。
ただ皆で楽しく生きてただけなのに。ただ幸せに生きてただけなのに。
今はただ、夢を見ていたい。幸せだったあの日々を。暖かかったあの頃を。冷たい今を誤魔化すように。
1/13/2024, 2:56:20 PM