NoName

Open App

 「どうして。どうして。」と何度も壊れたラジオの様に、言葉を反復させながら、目に涙を浮かべる。
 なにをどうしたらいいのか分からない。だか、一つだけ分かることがある。私は無力だということだ。


 幼い頃から、私は無力であった。世のため人のためと思いしたことが、全て裏目に出て無駄になる。そうしていつも、「向こうへ行って遊んでいなさい。」と両親に言われるまでがセットであった。
 私にはそれが苦痛だった。周りに出来て私に出来ない事があること。遠回しに私が邪魔だと言われていることが。苦痛であると同時に、不愉快でもあった。


 数十年後、私は一般企業に就職し、業務に毎日励んだ。だがここでも私のする事なす事は無駄になった。
 企画書や取引先への資料等、私が担当した物は必ず上司から指摘が入る。ここがどうだのこっちがああだの。私は最適解を出したつもりだった。それを根から否定された気分になった。


 その後、私は探偵事務所に再就職した。ここなら、私の「正義」が通じると思ったから。


 結果から言うと、私は出来損ないだと身に染みた。
 依頼者の女性の浮気調査で、旦那の浮気を調査する所が、こちらが訴えられることになってしまった。
 私が調査中、要らない正義感で暴走してしまったせいだ。


 どこで間違ってしまったのだろう。どうしてこうなってしまったのだろう。
 どうして、私は無力なのだろう。

1/14/2024, 2:55:30 PM