『過ぎ去った日々』 3月9日
もっとああすればよかった、こうしたかった。
そんな後悔は躰が沈んでしまいそうなほど浮かび上がるくせに、あの“当たり前”の日常がたまらなく特別で、“変わらない毎日”が信じられないほどたくさんの色を持っていたことに気付いた、今日。
もう3月。
私は来年も懲りずに次の3月の“過ぎ去った日々”を繰り返すだろう。
『お金より大事なもの』 3月8日
私はお金が嫌いだ。
ついこないだ、小学生の妹が母の財布から一枚の一万円札を抜き出した。
妹が出かけては持って帰ってくる、お菓子のゴミや見慣れないおもちゃを不審に思った父親が妹に問い詰めた事で事態は発覚した。
自分の悪事が見つかった妹は泣いていた。ごめんなさい、もうしません、と両親に縋っていた。父も母も渋々許したようだった。
私は相当ショックを受けた。少々素直じゃない所もあった妹だが、まさか盗みを働くとは。
その日から私の中で妹は犯罪者になった。
次の日には何もなかったかのようにけろっとしている妹が憎らしかった。昔からこうだ。自分がしでかした事の重大さも知らずに呑気に笑っている。
私は妹が嫌いだ。お金が嫌いだ。金でなんでも買えるこの世の中が嫌いだ。妹を犯罪者にしたお金が大嫌いだ。
『月夜』 3月7日
貴方が周りを暖かく照らす太陽なら
私は夜に光り輝く月よ
貴方が居るから輝いているの
ほら、地球の子供がこちらを指さして
きれい、って呟いた
でもね?この私の裏側は
貴方だけに見て欲しいの
『絆』 3月6日
「絆ってどんな形をしているの?」
コンビニのアイスを片手に君が問う。
太陽ばかりが自分勝手に輝いて、僕達を陰に溶かす。オレンジ色の街に二人。一日が終わろうとしているのに、まだシャツはじっとりとくっついて鬱陶しい。
僕に言ったわけではなさそうなその言葉に小さくさぁ、と返す。君は聞いていない。
「俺らの絆は変な形してんだろうな」
君がそう笑った。
いとも簡単に、不明瞭な“絆”というものが僕らの間にあることを言い切ってしまう君の横顔が照れくさかった。
『たまには』 3月5日
たまには君のことを忘れてみるよ
そして君も僕を忘れてみて?
口をぽかん、と開けたその間抜け面に
見慣れた君と再び「初めまして」を
ほらね
聞き慣れた笑い声が咲いた
たまには初めましてをもう一度、
僕の瞳が君色に染まった瞬間を