『大好きな君に』 3月4日
大好きなあなたへ
元気にやっていますか?なりたかった教師にはなれましたか?親孝行はしてますか?
僕はだんだん受験が近づいて、心に余裕がなくなってきました。今日もお母さんに強くあたってしまいました。毎日、もし落ちたときのことを考えて泣きたくなります。これまでの勉強も、我慢も、全てが台無しになってしまったら。お母さんは優しく慰めてくれるだろうけど、自分では自分のことを許せないと思います。
毎日がしんどいです。この手紙を読んでいるあなたは幸せですか?笑っていますか?
もちろんそうであるといいけど、でも、幸せでなくてもいいんだよ。笑えなくても、元気じゃなくても、なりたかった自分になれなくても、人に迷惑ばかりかけていても。
もしかしたら僕より辛いのかもしれないし、この手紙を笑って読んでいるかもしれない。
でも僕は変わらずあなたのことが大好きです。
過去の僕より
ぽろぽろと零れた涙が便箋に染みをつくる。生きよう、彼のために。僕に愛を伝えたもう一人の僕のために。自殺しようと買ったが踏ん切りがつかず、部屋の隅に放置された紐をゴミ箱に捨てた。数年前の自分から届いた手紙にもう一度目を通すと、徐に筆を執る。宛先は、
大好きな君に――
『ひなまつり』 3月3日
3年間通った高校を卒業するという日の朝、懐かしい雛人形が玄関に佇んでいました。ふと、忘れていた記憶がつられて引き出されます。
幼い頃、そこに飾られるお雛様が好きではありませんでした。人間味のない冷たい眼をもったあの人形がこちらを見つめているようで、何度も片付けてもらおうと母を説得しにいきました。
その度に母はくすりと笑って言うのです。お雛様がかなちゃんを見守ってくれるんだよ、と。その優しい声色と眼差しに言い返す気も萎んで、ひなまつり前後の数日は我慢していた思い出があります。
しかしそんな日々も長くは続かず、いつからか、お雛様をだす習慣もなくなってしまいました。今、もう何年も見ていなかったその顔を見ると、いつの間にか柔らかくなったように感じました。
おめでとう、そう言って微笑まれたように感じました。
『たった一つの希望』 3月2日
希望を見出すから、絶望に落とされるのに。
期待をしなけりゃ生きていけないなんて
ほんとうに馬鹿らしいわ。
出来るなら期待なんかせずに
楽に生きられないものかしら。
でもしょうがないんだから諦めて
今日もこんな私のたった一つの希望を、
絶望への切符を、生きるための糧を、
胸の中に大切に大切にしまっておくのです。
『欲望』 3月1日
僕の汚いこの欲望は、きっと世間にはただただ異常だと疎まれる類いのもので、または、その馬鹿さ加減に呆れられることだろう。
ずっと変わらない僕の想い。それは病的にこの躰を蝕んで、もう戻れない。否定してくれないからこそ終わらない。
息を止めたように静かな貴女にキスを落とす。それを拒むこともなく、ただただ静けさが聞こえた。