ななし

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11/11/2023, 4:41:37 PM

 この世界では飛ぶことが普通である。人々の背中からは翼が生えており、翼を羽ばたかせることで空を自由に飛び回る。
 なのに、私だけは空を飛ぶことができなかった。翼はあるのに機能してくれないのだ。とんだサボり魔の翼に当たってしまったらしい。

「どうして飛ばないの?」
 友人は不思議そうに私を見ていた。腹立たしいことに空を飛んで、高いところから私を見下ろす。降りてこいと言いたかったけれど、空を飛べるのが普通なのだから私は何も言えなかった。
「……気分が乗ったら飛ぶよ」
「ふうん。じゃあ、その羽は飾り?」
 きっと彼女には私を馬鹿にする意図はないのだろう。どうして空は青いの、と質問する幼子と同じ表情をしているから。
「……そうだよ。とびきりおしゃれでしょう?」
 全ての感情に蓋をして私は友人を笑顔で見上げた。友人もぱああと笑って言った。
「うん、素敵!」
 そう言って飛んでいってしまう。取り残された私は一人しゃがみ込んだ。

 飛べない翼には意味がない。でも、私は別に飛べなくてもいいと思うのだ。ただ普通になりたかった。ただそれだけなのに、それさえも叶わない。
 世界は普通じゃない者に優しくなりつつある。
 でも私の望んだ世界はそうじゃない。私は優しくされたいわけではないのだ。
 ただ、普通になりたい。普通に生きて普通に笑って普通に馴染みたい。

 翼を撫でながら私は空を歩いた。

11/2/2023, 4:12:49 PM

わたしは夜の音が好きだ。
夜は静かだけれど、だからこそ耳をすませば色んな囁き声が聞こえてくる。昼間は聞こえて来なかった音たち。

例えば本の頁を繰る音。静かに今を刻む時計の秒針。家の外では風がさざめいている。それから同居している人の寝息。どこか遠くを車が通る音。もう少ししたら新聞配達のバイクが通るかもしれない。

そうして夜の音を聴きながらわたしは眠りにつく。

10/14/2023, 1:18:25 AM

子供のようにわらう