「飛べない翼って無駄なのでしょうか」
先生にこう問うと、
「世の中に無駄なことなんてないんだよ」
なんて抽象的な答えが返ってきた。私は落胆した。
少なくとも私はそんな綿菓子のような言葉を望んでいなかったのだ。澄ました顔で先生の整った顔を眺める。
けれど落胆が顔に出ていたのかもしれない、先生は笑って言葉を紡いだ。
「望んだ言葉が返ってこないのは不満かい?」
はっとした。私は私の望んだ言葉を先生に言って欲しかっただけなのかもしれない。
「いいえ。それじゃあ会話の意味がないもの」
それが精一杯の虚勢だった。それさえも先生に見透かされそうで私は視線を逸らした。
「そう、及第点。じゃあ逆に問おう。君は僕にどんな言葉を期待していた?」
「……無駄なことは無駄だと言ってほしかった」
からからと先生は笑った。
「僕は君がそう思っていると思ったから、敢えて逆のことを言ったのさ」
先生はずるい人だった。結局答えは得られないまま、わたしは今日も飛べない翼に想いを馳せる。
11/12/2024, 9:04:10 AM