『可能性の音楽』
或る少女の16ビートが響く午後 バスケットシューズがきゅんと泣く朝 遠く遠く背の高いフェンスまで伸びる影があなたの長所に見えたんだ 優しさをたくさんもらった私はきっと誰かに妬まれる それでもいいと関係ないやと思えるほどのドキドキを私はちゃんと持っている 今この瞬間何でもできる 付点四分音符浮かんだ初夏だ そうだ、何でもできる
『化け物』
いつだって分かれ道の後には後悔という化け物がついてまわる 選ばなかったもう片方、天使の微笑を思い描いてしまう 謎の(理想の)誰かと恋に堕ち、不自由の無い生活を 私が選んだ分かれ道、フライパンには目玉焼き この眼球が化け物か?そう思うと妙に愛らしい 悔しいけれど愛らしい今の私も生活も
『風琴』
『まだヘッセなんて読んでるの?』と言われて しゅんとした 突然の雨に降られて少し開き直るのだ
ボブディランを聴く 風になったような心持ち 午後5時5分、雨空に勝ち誇ったように夕日が照らす 廃墟の屋上 何かが鳴った ことこときらきら 小さいけれど確実に
『自宅待機』
夜が深く地中に潜り込む 静寂の中、救急車が疾走する 外では何が起こってるんだろう?買いだめしたお菓子を貪る自分が一瞬情けなくなる 君が帰ってきた
穏やかな表情でまた手にお菓子を抱えている さすがにこんなに食べきれないよ 明日になったらまた食べよう、、そうか、僕は無意識のうちに明日が来ると、、それが当然のことだって、、
『少年期のぱれえど』
ライ麦畑に行きたいと 飛び降りたブランコは 黄色い塗装が剥げかけたオンボロだ 遊びは仕事と言い聞かせ 門限ギリギリの綱渡り ポッケの中のサラダせんべい もうとっくに粉々だ 膝小僧に沁みる傷
痛みはいつも後からで 夢中の時は気づかない
叱られたってなんだって ぱれえどはまだ続いてく