『青春二人ぼっち』
世界の終わりのような大きな夕日 紅く染まる明大前
パッとしないネルシャツで君に声をかける
所用を済ませたら帰ろうと思ってた だけどこんなときに少し不思議はやってくる 駅の雑踏からなぜか僕らは二人ぼっち 咳をしていたおじさんも 画家風の学生も もういないもういない 夕日はとっくに溶けてきて だるま食堂Aセットの生卵のようになっている 僕はネルシャツの袖を上げる 意味もなく 君は地面に円を描く これもまた意味もなく そうだ、少し不思議の正体は青春そのものだったのだ
『東風』
審判の朝、罠なんじゃないかって思うほど空が晴れ晴れとしている 知らないけれど居心地の良い街並みを歩く 時折、知らないけれどやはり居心地の良い友人たち(本当は知っている?)とすれ違ってはタッチする 左手にはコロナビール 立ち寄ったライブバーは
改装中だった 酔いのせいか記憶が溶けていく
私が誰かは知らないが 溶けていく記憶の中、私が私になっていく
『リビルド』
壊れかけのマイクロフォンが示す暗示は雑音のち静寂
背の高いビルディングはできることなら転倒して新たな自分と巡り逢いたい この胸の高鳴りをリビルドしたい 発見して隠して 再発見してもう離れない
創造の塊をリビルドしたい 解凍してクリックして
再解凍してもう離れない
『不条理の庭』
目が冴えるほどの絶景の下 溢れ出す悪口と妬みで
会話(と言っていいのだろうか)が成立している
これが彼等の愉しみだとしたら 私の喉を庇護するものがいよいよ悪魔になるだろう 感謝と感謝は睦み合い 淀みのない川に溶けていく そんな庭を想像していた 彼等の会話を紡ぐ糸のほつれが やりようのない鬱屈を増幅させる
『君が好きそうなメロンパンを見つけたよ』
休憩時間も束の間 感情線の小槍の上でアルペンダンスは踊れない 嘲笑われても放っておかれても
ここでなんか泣けない泣かない 万人の涙を誘う旋律も 無難に美味しい時短レシピも 見ないふりして
敢えて無視して 走り出す 走り出す それだけ聞いたら 私は絶賛青春謳歌中 そういえば飲み物を買ったコンビニで 君が好きそうなメロンパンをみつけたよ