『春眠と欲望』
春の朝、未だ起きれず 海老の姿勢で眠っている
海の底にいるようだ 海面を見上げて呟くは
人の欲望は無窮である 守るための暴力や平和であることの圧力にひたすら背を向ける 正しさはいつでも反応の無いリトマス試験紙だ 海老は眠る 昼をゆうに超えて 夕暮れはもう近い
『遠い街』
遠い街へ行く その街でこれから暮らす 僕の背丈では世界はまだまだ見えにくい 未来って言葉がずるいって思う あのこはここで暮らすのに 僕はここで暮らせない 巣立ちはとても残酷だ 翼なんかなくても
いいって思う 春は何かと鼻をくすぐる その日が来たら僕は号泣の嵐 天気予報はまんまとはずれた
『永遠の非常口』
ゲンコツ山から逃げたくて 針千本も飲みたくない
四方八方固められ 作り笑顔でごまをする
どこにいった?素敵な私 どこにいった?シンクのたわし 頭を散らかし バイトでやらかし 罰ゲームで練り辛子 走らなきゃ 走らなきゃ 決して長くない足で 陸上選手にほど遠い だけども愛しいその足で
目指すは永遠の非常口 あたま空っぽのユートピア
『君は今』
テーブルの下から切り取る世界 この価値観だけで暮らしていけたらどんなにいいか 染色液に浸された
取り留めのない配色の毎日が 頭痛を呼び込み思案を鈍らせる 君は今、散歩から帰路に着く いつもの散歩道の公園でフリーマーケットがやっていたらしく
藤のゆりかごを抱えて笑う 赤ちゃんもいないけど
無論、そんな予定もないけど とてもいいねと私も笑った
『星がきらりと』
物憂げな空 重苦しい瞼 鬱々としていると
星がきらりと瞬いた 果てなく続く数式の光 かつての獣が涙したこの光 空が心の鏡なら 星は一体なんだろう そう思ったらあれだけ知りたかった悲しみの正体もぼんやりと薄らいで ふわりと軽くなるこころ
悲しみは居留守が上手く 少し不貞寝をしているようだった