『小さないのち』
窓の外 雨粒ひとつに小さないのち 小さな生活
立派な営みを垣間見る 土に滲み入るその雫は新たな世界の一欠片 壮大なパズルゲームのプロローグ
蛙の鳴き声ファンファーレ 雨の日の行進だ 数多のいのちの誕生だ
『らびゅっと』
朝日を浴びてらびゅっと出発 フェンスの向こうに各駅停車 一日の始まりを報せる 思ってみればあなたほどらびゅっとくる相手を私は知らない 濃厚クリームパンも くまのコールテンくんも ディオールの甘い香りでさえも あなたには叶わない 8時45分、電車に揺られ今日のらびゅっと大作戦を企てるのだ
『午睡』
晴天、太陽の下で午睡をしている 我が人生のピンぼけを帳消しにする午後だ 飛行機が飛んでいる 私も
私で旅をするフリをする 脳内フライトは大気圏外へ
太陽のようなものを発見 それが太陽かは定かではないが、みればめらめらと燃えている 赤褐色に包まれて 目も耳も脳みそさえも機能不全に陥って 怯えたように目を覚ます 『ふぎゃあゝ』という私の叫びが
誰かに聞かれていませんように
『絶無』
薬指を濡らして考える 私は入れ物だったのか
古書の匂いで頭が揺れる 額は奴等の窓口で
所謂、移民が始まるらしい 私はもうじき空っぽで
記憶を全てなくすだろう 空の存在 あの青い空の存在 雲の名前 あの白い雲の名前 これを終わりと呼ぶのか始まりと呼ぶのかわからないほど眠くなる
『余地は無い』
町工場に被害者の列 それを嘲笑する鴉の群れ
道を誤ってしまったのだろうか それとも考えが甘かった? 全て自分のせいなのだろうか? 好ましくない夕暮れにまたしても鴉は鳴いて カァカァカァ、、
中途半端に寄り添って 共感ならしたフリだ
つまらない小説くらい同情の余地は無い