お客さんお目が高いね。
コイツを着ていると道はバァーって流れて歩きやすゥ、脱げばさっと道が開くイッピンでさァ。
あァ、だめだね、その色はハヤリじゃねえ。こいつじゃ何処にも行けねェよ。
いや、こいつも惜しいね。近ェ色だが柄が違えンだ、それが一番いけねェ。
最近ハコで買い取ったんだ、しばらくは流行ンねえ、歩けたもんじゃねえゾ。
って、なんだいあんた、いいの着てると思ったらウラガエシじゃねェか。
いいや見間違えねェ、ニュースで何度も見たもンだ、お前ェさんしか着ちゃいねェ。
そいつを下取りで、見繕いね。そりゃあいい買いモンだ。
馬鹿言っちゃァいけねェ。
ウチが店屋であるうちに、とっとと帰ぇンな、売るモンはねェ。
脱げと云われたって?
そりゃそうだ、アンタが脱いだら誰も言えねェ。
そいつァあんたが一生着るンだよ。
ソイツでうちが儲かるンでさァ。
――――
(善悪)
弾け終えた線香花火が最期
ぼうとひかるまま黒に落つ
ぽつり ぽつりと
よこか うえかも わからない
君は「食べ放題だ」なんて
わんこ蕎麦の 喰らう拍子
一行 揺れて
一行 戦慄き なぞっていく
君の笑い声は 聞こえない
君のノートは 覗き見ない
さっきもしたよ 線香花火
いっそ買わねば良かったと
ほんの数刻前を思い返して
きっと買わずにいられない
もう見飽きたよ 線香花火
君は人に問い 人は応えない
僕は空に問い 君の瞳を見たくない
火種は最期を問い 僕らは贖えない
―――――――――
(流れ星に願いを)
「Change The World」で
急にクラプトンは、
『たとえ一日でも
王になれるのなら
君を女王に迎えて
私たちの王国で
私たちの愛が治める』
だなんて歌いだす。
ともすれば偏執的で、
まるで洗脳してでも、
『君』を欲しがるように。
元は逆で、
ジャッドが女性として歌った。
『たとえ一日でも
女王になれるのなら
貴方を王に迎えて
私たちの王国で
私たちの愛が治める』と。
貴方が私の愛に気づいてくれるなら、
私は貴方のすべてを照らしてみせる。
心を閉ざす『貴方』へ
愛のもどかしさを募らせながら
遂には『女王になれたら』と想う。
貴方が王になることを受け入れ
私の隣に来てくれるのならば。
たった一日なりゆきにでも、
夫婦として生きることができたなら。
まるで愛が全てを治めていくように、
世界が色づき動き出し始めるように、
貴方に思わせてみせる。
二人で生きることができたなら、
貴方のすべてを照らしてみせる。
富も権力も望まぬ願いが、
女王になれたらと思わせるほどに、
『貴方』の心は遠く、遠過ぎる。
悲痛なほどに、
一人の女性としての想いに満ちた詞。
男が、女が、という時代ではないし、
クラプトンが王として歌うことも
ジャッドの心情を想えば漸く、
もはやそこに何の偏執性もない。
And our love would rule
In this kingdom we have made
行き過ぎた解釈かもしれない。
まだ私には、
この「rule」を超える言葉は
今夜、出てきてくれそうにない。
―――――
(ルール)
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――――――――
(今日の心模様)
君の名を呼ぶ
どうしようもない感情を
溶かして
また
君の名を知らない日
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(たとえ間違いだったとしても)