君は僕の世界から
消え去ろうとする
視野に入れれば
くるりと回って
やがてはいつも
背に貼り付いた
掴まれた両肩
難解な指遣い
ときおり拳が
肺を鳴らして
君は君
以外の君を
思い知らせ
ようとする
何も交えず
誰も捉えず
吐息を
なぞり
鼓動を
揃え
―――――――――
(言葉にできない)
暗き根を履み
咲いた咲いたと
艶やかに
受話器を下ろす
結い髪に触れ
暖簾端
華に宵
渡世を忘れ
肩身ばかりの
仮纏い
日和に憂かれ
鴻鵠を追う
―――――
(春爛漫)
きっと君は 片眉を吊り上げて
悪罵を連ね 軽蔑するのだろう
昨日パフを 舞い上げたときの
三倍くらい 煙たげな顔をして
「無責任過ぎ」 だから言わないよ
僕にとって 決意の言葉さえも
君にとって 未知で欺いた虚飾
愛にとって 誰かなんて幻想は
「人によって」 驕った自他の肥大
誰かが君を 僕より愛したとて
君への愛が 彼より劣ったとて
君がそれを 泣いて悔んだとて
揺るがない 君は僕を小突いて
「無責任過ぎ」 だから言わないよ
―――――――――――
(誰よりも、ずっと)
あるいは、きっと。
あの人が。
蝶のように。
ふらりふらりと。
また、いつものように。
それでいて、また。気まぐれに。
ともすれば。
昼下がりの抜け駆けのように。
朝露の幕間を暖めたように。
ほんの少しの真剣さを帯びて。いつか。
当たり前のように。
この手を牽いて。
掴み処のない貴方を、縺れた爪先で、
細く、
細く。
くすぐるように追い縋るのだと。
思い描いた夢現は、夢現のまま。
はらりと、縁談は、舞い降りて。
それは、確かに。
私の夢想に、成り果てた。
―――――――――――
(これからも、ずっと)
彼女の一声が虚ろな雑踏を塗り替え顔色を喪う
一面は朱く照り返し瞼を焼く陰ばかり勿体ぶる
やがてもう直ありふれた夜に呑まれるのだろう
泥む想いが肺の裏辺りに縋って行き場を失くす
他人のように憐れんで西は頬を刺し続けていた
―――――
(沈む夕日)