空を映すビー玉のような
海を閉じ込めたガラス鉢のような
当たり前の如く甘えてくる子猫のような
生まれたばかりの魂のように
キラキラした星のヒトカケラを拾い上げ
フゥーッと息を吹き込んで
紺色のビロードが拡がる空へ送り出す
嘘つきな僕には手に余る
軌跡を描きながら彼方へ飛んでゆく
君を眺めながら目を細めた
この夜の向こう側に辿り着ける頃には
この嵐も泣き止むのでしょうか
額に滲む汗も
痛いほど胸を打ち続ける動悸も
鳴りやむことの無い耳鳴りも
全て消し去ってくれるほどの
優しい雨雲が覆い尽くしてくれるというのならば
嵐の夜も悪くはないのでしょう
色とりどりの飴屋が並ぶ
面を被った店主が おいでおいでと手招きをした
ゆらゆらと昇りゆく
一面を埋め尽くす提灯たちが照らし出すのは
空を泳ぐ巨大な黒い鯨
ビードロを吹きながらはしゃぐ童たちの上を
ボゥーと、低い鳴き声をあげて
ゆっくりと凪がれていく
どこかで見たような
何か大切なものを忘れてしまっているような
そんな郷愁が、一陣の風となって
夜市を裸足で駆け抜けていった
八百万の神々の 詔を賜ると
我こそが御使いぞと
八百万の民草もまた 口を揃えて宣った
信仰といふ偶像は 幾多数多の祈りを糧に
那由多の彼方まで膨らんで
それは光であり それは深淵でもあった
救いの手を求める者
されど畏怖の対象となる者
古今東西 移ろえど変わらず
その心見えず
己が心すらも見失う
私という人物は御大層なものではありません
すぐに面倒臭がり放り出したくなるし
ちょっとしたことで腹を立てるし
正義か悪か、そんなことはどうでもよく
私というものに害なす者は簡単に呪うことだってある
なんの取り柄もありません
他人に嫉妬するほどの気力も失いました
未来への希望、ありません
そんな私でも
そんな私でも
世の理不尽なニュースには少しばかり憤るし
自ら命を投げ捨てた者の噂を耳にすれば
その人生を思い、少しばかり憂うこともあるのです
私の人生は御大層なものではありませんが
私に優しい者たちの人生が
少しでも幸せであればと
願うくらいの心はあるのです