ついに明日だ。あたしが殻を破る日。
「無理はするなよ」
幼馴染はそう言ってくれた。けれど、あたしは頑張らなくちゃいけないのだ。それが望まれているから。それを望んでいるから。
少しだけ眠れない。足が少し凍える。大丈夫だ、と散々自分に言い聞かせていたけれど、やっぱり不安なのだ。あたしを受け入れてくれるのかな? そう思っているわたしがどこかで呟く。突然現れた知らないクラスメイトと、受け入れてくれるのかな?
少しだけ涙が出てハッとする。あたしには味方が居ること。お母さん、お父さん、弟、そして幼馴染。それだけ居てくれれば十分だ、明日のあたしはきっと大丈夫。
安心した瞬間に、あたしの意識はスウと消えた。
#眠りにつく前に
いつか好きじゃなくなる。いつか喋らなくなる。いつか会わなくなる。何事にも終わりはあるのを信じて、誰かが消えるのが怖くなって、人と関わるのを諦める。
#永遠に
全てが上手くいく世の中だったら良いのに。
人の感情が読めたら良いのに、
#理想郷
ずっと好きと言えなかった。向こうから告白をもらって、何度もデートに行って、お互いの事を愛し合った。
けれど、わたしの愛は彼には伝わっていなかったらしい。「俺の事好きじゃないでしょ」。そう言われて振られた。そんなことない、と伝えても今更だった。家に帰ってから失ったことの大きさに気づいて、何回も泣いた。
伝えていれば変わっていたのだろうかと考える。未練があるというわけではないのだが、たまに考える。もう悲しさはなくて、もう思い出になっているのだから、美化されているのだろう。つらさは酸化するものだ。
#懐かしく思うこと
『ずっと前から好きでした、付き合ってください』
なんてことない、告白の言葉。僕は勇気を出して、送信ボタンを押した。心臓が止まりそうだ。
君とは中学の頃はよく話したし、一緒に桜を見たこともあったけれど、もう君にとって僕はなんてことない存在なのかな? そうではないことを信じて、僕は君からの返信を待つ。
『気持ちは嬉しいけどごめんなさい、これからも良い友だちで居たいです』
予想はついていたのかもしれない。感情がぐちゃぐちゃになって、自分が何を思っているのか分からない。既読をつけることができない。体全体が震えているのだけが分かる。
数日後、彼女に恋人がいることを知った。そう伝えてくれれば良かったのに、なんて自分勝手でしかない。
恋人が居なければなんてifを考えても無駄だけれど、辛すぎて考えざるを得ない。もっと早く告白すれば良かったかな、とか考えたくない。ただただ泣き出したいのに、僕の目から涙は零れなかった。
#もう一つの物語