涙がぽろりと落ちる。しょうもないことで泣いてしまったと、ハッとする。疲れているんだ。明後日くらいに有給でも取って、ゆっくり休んでみようかな。
#心の健康
表情豊かに楽器を吹くあなたを見ていたい。
後ろから聞こえてくるあなたの音から、あなたが吹いている姿を想像する。
大きく息を吸うときに膨らむほっぺ。低い音を出す時に見開く目。「酸欠になりそ〜」って言いながらゆっくりと楽器を置く姿。
あなたの音が、みんなを支える。それに少し嫉妬してしまう。
#君の奏でる音楽
厄年かもしれない。何度も体調不良になるし、好きな子はつれないし。けれどあなたは、(変だけど)良い先輩に恵まれているし、あなたの上達のスピードには目を見開いてしまう。だから、前へ進んでほしい、進める力があるから。
わたしから、後輩へのメッセージ。
#上手くいかなくたっていい
「お姉っちゃん! 見て見て、またママが買ってくれたの」
そう言って妹は、わたしが欲しいものを見せた。
「お姉ちゃん、買って貰えなくてかわいそ! やっぱりさ、ママの言う通り、"出来の悪い子"は与えられないんだから、お姉ちゃんも頑張ってね」
妹の精一杯の励みの言葉は、少しひねくれていて、母の思想を受け継いだものだと実感する。受け継ぐことができなかったわたしが淘汰されるのは当然のこと。
自分に思想が似ているものを好み、異なった価値観を持つものを排除する。妹だけを愛でて、わたしには形だけの世話をする。わたしを、可哀相だと、不当だと思う人間も在るだろう。ただ、わたしはもう愛でられることを嫌悪してしまうから、妹が不憫で不憫で仕方なくなる。
自分が受けた子育てを、そのまま我が子にする人がほとんどだと言う。母はきっと、区別される子育てを受けたのであろう。どちらの立場かは知る由もないが。
「お姉ちゃん? どうしてそんなに行動しないの? ママに睨まれちゃうよ。わたしママには笑ってほしいんだけど、お姉ちゃんはそう思わないの?」
親に無駄に甘やかされて育った人間が、大人になれる気がしないのは、わたしだけだろうか。程よく愛でられるのは非常に快いものではあるが、妹に対する母のそれは、過剰であるように感じてしまう。
それでも、わたしは母に愛でてほしいと偶に思ってしまうのだ。
#蝶よ花よ
「あっぢぃぃぃ」
汗でずぶ濡れの君はそう言った。汗を袖で拭うその動作は、嫌悪感を抱かれてもおかしくないはずなのに、わたしにはそれがひどく輝いているように見えた。
「んもう、そんなこと言いつつずっとテニスしてたんでしょ? 今日くらいやめといたらいいのに」
「いやーでもさ、もうすぐ大会近いから。今年で最後だし、手を抜く訳にはな。心配させてすまんな」
そう言って君はわたしの頭にポンと手を置く。そして、「あっつ!」と瞬時に手を離した。
「お前さ、ずっと外いたの? 頭熱すぎ」
「んー、テニスするの見てただけだし」
君は、やれやれと言いたげに俯いたけれど、その頬は赤らんでいた。
#太陽