「お姉っちゃん! 見て見て、またママが買ってくれたの」
そう言って妹は、わたしが欲しいものを見せた。
「お姉ちゃん、買って貰えなくてかわいそ! やっぱりさ、ママの言う通り、"出来の悪い子"は与えられないんだから、お姉ちゃんも頑張ってね」
妹の精一杯の励みの言葉は、少しひねくれていて、母の思想を受け継いだものだと実感する。受け継ぐことができなかったわたしが淘汰されるのは当然のこと。
自分に思想が似ているものを好み、異なった価値観を持つものを排除する。妹だけを愛でて、わたしには形だけの世話をする。わたしを、可哀相だと、不当だと思う人間も在るだろう。ただ、わたしはもう愛でられることを嫌悪してしまうから、妹が不憫で不憫で仕方なくなる。
自分が受けた子育てを、そのまま我が子にする人がほとんどだと言う。母はきっと、区別される子育てを受けたのであろう。どちらの立場かは知る由もないが。
「お姉ちゃん? どうしてそんなに行動しないの? ママに睨まれちゃうよ。わたしママには笑ってほしいんだけど、お姉ちゃんはそう思わないの?」
親に無駄に甘やかされて育った人間が、大人になれる気がしないのは、わたしだけだろうか。程よく愛でられるのは非常に快いものではあるが、妹に対する母のそれは、過剰であるように感じてしまう。
それでも、わたしは母に愛でてほしいと偶に思ってしまうのだ。
#蝶よ花よ
8/8/2023, 4:13:51 PM