青空だ。堅苦しいベッドの上から、ひどく大きな窓を通して外を見る。上の方の階だから、かなりの絶景だ。わたしが行ったことのある街並みが全て見えて、懐かしい気分になる。と同時に寂しくもなる。
もう行くことはないのだな、と。
#病室
「寝取るとかサイテー」
友達が言った。彼女を取られたらしい。その、取った相手はわたしが嘗て大好きな人だった。
人間関係はぐちゃぐちゃになっていく。波紋が始まってしまえば、留まることを知らない。壁に届いた波紋は跳ね返り、また新たなところへ向かう。
温厚に、穏便に。誰もが願うこと、大抵上手くいかないけれど。人々はまた、嵐が去ることを根拠もなく願っている。
#明日、もし晴れたら
神が本当にいるなんて、信じていなかった。けれど、玄関から出ると、僕の目の前にそれは居た。
「……どうも、神です」
漫画や小説に出てくるような威厳のある感じじゃなくて、コミュ障で俯いていて、なんだか親近感を持ってしまう。
「神様がどうして僕のところに?」
「それは……わたしが出来損ないであるからです」
もっと俯いて神は言う。僕が持っていた神のイメージと違いすぎて、少し拍子抜けた。
「取り敢えず、お茶飲まない? 家入りなよ」
神相手にタメで良いのか分からないけれど、僕は自然とそのように喋っていた。
「ありがとうございます……」
神は顔を上げてそう言った。そこに浮かぶ笑顔は懐かしい思いがして、僕は少し涙した。
#神様が舞い降りてきて、こう言った。
人のために何かができるだなんて、なんて素晴らしいことなのだろうか。強制でも任意でも、他人のために動くという行動をとったら、人は認められるべきだ。他人のためになったなら賞賛されるべきだ。
けれどわたしは、賞賛されるためではなく、あなたの笑顔を見るために行動する。
#誰かのためになるならば
ピピピピピ、と鳴いた。届かない。
届いてほしい人の元へ、早く開放されたい。
#鳥かご