窓越しに見えるのは
地方の都市。田舎ではないけれど、大都会にはなりきれない街並みを眺め、山を貫くトンネルを通り過ぎれば、左手に海が見える。
「あ、漁船かな」
遠くポツンと見える白い船は、時折ボォーと汽笛を鳴らす。実家にいた頃、たまに聞こえたその音が、案外好きだったのだと気づいたのは割と最近の話だ。
久しぶりの帰省は、電車の窓越しに見える風景を眺めるようにしている。
懐かしいような、楽しみなような、そんな気持ちにさせてくれるから。
まぁ、生まれ育った町には駅なんてないので、故郷の風景は見えないのだけど。
最寄りの駅で電車から降りたら、バスに乗って約40分、今度こそ故郷の風景を堪能しよう。
君と最後に会った日
君が、楽しげに笑いながら話してくれたことを覚えている。
いつも泣き虫でウジウジしていた私を、君は笑い飛ばしてくれたよね。
あの時は、なんで笑うの⁈なんて言って余計に泣いたり、君の笑いが移って、私まで笑えて来たりしたこともあったよね。
覚えているわよ。大事なことだもの。
君のお葬式。私は立派に、喪主ができていたでしょう?
私、泣かないように必死だったんですからね。
ちゃんと君の顔を見て、お別れを言えてよかったわ。
君と最後に会った日は、今にも雨が降り出しそうな空だった。
終わりなき旅
故郷の村を出てから、何年が経っただろう。
自分の好奇心を抑えられなかった俺は、家族の反対を押し切って旅に出た。この世界のことをもっと知りたい、こんな田舎で一生を終えるのなんて嫌だ、なんて言って碌な準備も知識もないまま飛び出したのだ。
今思うととても若く、未熟な人間だったと思う。それでも、後悔はしていない。
いろんな人と出会い、さまざまな土地をめぐり、今まで気づかなかった想いや知識を知った。
後悔どころか、俺の欲は増すばかり。まだ知らないことがある、もっと遠くまで行けると考えると、それだけで楽しくなってしまう。この欲に終わりはあるのだろうか。
次は、どこへ行こうかな。
「ごめんね」
昔から、よく嘘をついていた。
嘘つきは泥棒の始まりだって聞いたこともあったけど、私の場合は違った。
覚えている中で、初めて嘘をついたのは幼稚園の年中さんの時。確かクラスは、きりん組だったっけ。
うわーん
「はなちゃんがおもちゃとったー!かえしてよー!」
「はな、とってないもん!しほちゃんうそいわないで!」
うわーん、わーん
2人して大泣きしていたら、先生が仲裁に来たんだよね。どうしたの?どっちが嘘ついてるの?って。
まともな説明なんてできてなくて、話は二転三転、支離滅裂だったと思う。先生も困っちゃって、廊下に出て2人で納得いくまで話し合いなさい、話し合いが終わったら先生に教えてって。
どんな話し合いをしたかなんて覚えてないけど、結局、お互いにごめんねして、仲直り。どっちが嘘をついてたかなんてうやむやになって、おもちゃは仲良く使うように、次貸してって言えばいいんだからね、みたいなことを言ってたかな。
叱る先生が見てたのは、多分はなちゃんの方。
はなちゃんには悪いことしちゃったよ。
いや〜、ごめんね?
天国と地獄
どちらも死後の世界と言われるもの
死んだ後、辿り着く世界
まだ生きている者が知るはずのない世界
もしも存在するのなら、私は地獄に行くだろう