別れ際に
私はいつも誰かと別れる時に、“またね“と言うようにしている。
仕事でお客様の相手をした時も、“今日はありがとうございました“ではなく、“今日はありがとうございます“と言う。
変に思われるかもしれないけれど、ただ過去にするのではなく、また次もあると感じてもらえたら嬉しいと思う。
何より、私自身がそう信じたいから。
一度関わりを持った人に、また次も会えたら、その時に相手が少しでも私のことを覚えていてくれたら、それを誰かに共有してくれることもあるかもしれない。
そうして広がる人との関わりが人脈となって、私や私と関わってくれる人たちの将来を広げてくれるはずだから。
別れ際にほんの少しだけ気をつけていること。
さよならを言う前に
学校生活
卒業
別れ
在学期間
別れがいつか知っている
その前に
遊ぶ
語る
喧嘩する
寄り道もして
勉強会はお菓子の交換会になって
いっぱい写真も撮って
後悔をしないように
やりたいことをできるだけやる
でも
卒業した後も一緒に遊ぼう
知っている別れなら、大したことじゃないから
大人になっても
結婚しても
子供ができても
孫ができても
何があっても、良い関係でいよう
知らない別れが来る時まで
本当のさようならを、言わなくちゃいけなくなるまで
窓越しに見えるのは
地方の都市。田舎ではないけれど、大都会にはなりきれない街並みを眺め、山を貫くトンネルを通り過ぎれば、左手に海が見える。
「あ、漁船かな」
遠くポツンと見える白い船は、時折ボォーと汽笛を鳴らす。実家にいた頃、たまに聞こえたその音が、案外好きだったのだと気づいたのは割と最近の話だ。
久しぶりの帰省は、電車の窓越しに見える風景を眺めるようにしている。
懐かしいような、楽しみなような、そんな気持ちにさせてくれるから。
まぁ、生まれ育った町には駅なんてないので、故郷の風景は見えないのだけど。
最寄りの駅で電車から降りたら、バスに乗って約40分、今度こそ故郷の風景を堪能しよう。
君と最後に会った日
君が、楽しげに笑いながら話してくれたことを覚えている。
いつも泣き虫でウジウジしていた私を、君は笑い飛ばしてくれたよね。
あの時は、なんで笑うの⁈なんて言って余計に泣いたり、君の笑いが移って、私まで笑えて来たりしたこともあったよね。
覚えているわよ。大事なことだもの。
君のお葬式。私は立派に、喪主ができていたでしょう?
私、泣かないように必死だったんですからね。
ちゃんと君の顔を見て、お別れを言えてよかったわ。
君と最後に会った日は、今にも雨が降り出しそうな空だった。
終わりなき旅
故郷の村を出てから、何年が経っただろう。
自分の好奇心を抑えられなかった俺は、家族の反対を押し切って旅に出た。この世界のことをもっと知りたい、こんな田舎で一生を終えるのなんて嫌だ、なんて言って碌な準備も知識もないまま飛び出したのだ。
今思うととても若く、未熟な人間だったと思う。それでも、後悔はしていない。
いろんな人と出会い、さまざまな土地をめぐり、今まで気づかなかった想いや知識を知った。
後悔どころか、俺の欲は増すばかり。まだ知らないことがある、もっと遠くまで行けると考えると、それだけで楽しくなってしまう。この欲に終わりはあるのだろうか。
次は、どこへ行こうかな。