雪を待つ
天気のいい冬の日、と言うか、冬は基本的に天気が崩れることがない
遠くの空には、黒くて重そうな雲がずーっと続いているのに、この町はいつもいい天気なのだ
それはもちろん、生活していく中ではとてもいいことなのだけど
たまには雪とか降らないかなって期待してしまうのだ
生まれてこの方、雪が積もる様を見たことがないのだから
特に寒くて快晴の日には、風上で降った雪が風に乗ってここまで届くことがある
風に乗って、長い距離を飛んでこれるほどに寒いのだから、本格的に降ってもいいではないか
今冬こそ、雪が降り積もる様を見てみたいと、毎年のように思う
今年もこの地域で、雪を待つのだ
イルミネーション
肌を指すような、寒風が吹き荒ぶ夜
隙間を無くそうと、マフラーに顔を埋めながら歩く道
ふと、視界の端に街灯とは違う明るさを見る
田舎らしい大きな家の屋根から、壁伝いに一面、イルミネーションが飾られている
この家の人は、毎年イルミネーションをやっているなとか
屋根から伸びるようにするのは、どうやっているのだろうとか
準備も片付けも大変そうなのに、よくやるよなぁとか
思うことはいろいろあるけれど、つい頬が緩くなってしまう
この季節を全力で楽しもうとしている様子を、想像してしまうからだろう
雪が降るような地域でも、個人宅でイルミネーションってやるのだろうか
その場合、その地域特有の注意事項があったりするのだろうか
寒いとしか考えられなかったことを忘れるほど、楽しくなってしまう
愛を注いで
愛とは様々あるものだ
親愛、友愛、恋愛、偏愛、慈愛、博愛…
数ある愛の中でも、一等感情を揺さぶられたのは、あれは無償の愛だろう
遊び疲れ、寝落ちてしまった子を寝床に運ぼうと抱き上げる
腕の中の子が、ふぅ、と深く息を吐き体中から力を抜く
抱き上げた時に少し起きたのだろう
けれど相手が私だと分かった途端、安心したのだろう
いつもと変わらない、何気ない瞬間
他の何よりも純粋な、無償の愛
親が子に注ぐ愛と同じか、それ以上に
子は親へ愛を注いでいる
別れ際に
私はいつも誰かと別れる時に、“またね“と言うようにしている。
仕事でお客様の相手をした時も、“今日はありがとうございました“ではなく、“今日はありがとうございます“と言う。
変に思われるかもしれないけれど、ただ過去にするのではなく、また次もあると感じてもらえたら嬉しいと思う。
何より、私自身がそう信じたいから。
一度関わりを持った人に、また次も会えたら、その時に相手が少しでも私のことを覚えていてくれたら、それを誰かに共有してくれることもあるかもしれない。
そうして広がる人との関わりが人脈となって、私や私と関わってくれる人たちの将来を広げてくれるはずだから。
別れ際にほんの少しだけ気をつけていること。
さよならを言う前に
学校生活
卒業
別れ
在学期間
別れがいつか知っている
その前に
遊ぶ
語る
喧嘩する
寄り道もして
勉強会はお菓子の交換会になって
いっぱい写真も撮って
後悔をしないように
やりたいことをできるだけやる
でも
卒業した後も一緒に遊ぼう
知っている別れなら、大したことじゃないから
大人になっても
結婚しても
子供ができても
孫ができても
何があっても、良い関係でいよう
知らない別れが来る時まで
本当のさようならを、言わなくちゃいけなくなるまで