好きなものをレジに持っていって買い物をする大人達。
子どもの頃は、それが羨ましくて仕方がなかった。
親がだめだと言えば、自分の好きなものが買えなくて。
早く大人になって、好きなものを買いたいと思った。
漫画におもちゃにお菓子にゲーム。ほしいしやりたいことはたくさんあったのに、お金がないから、すぐ使わなくなるから、と、全然買ってもらえなかったあの頃。
それに引き換え、お母さんは使いもしないダイエットの機械とか買ってるじゃん、お父さんはめちゃくちゃ高い車を数年おきに買い換えてるじゃん。
子どもの頃は、とにかく大人達だけずるいと思った。
今、自分が大人になってみると、物価が高くなって、カップラーメンや自動販売機が段々と高価になってきた。
毎日の生活のための電気代だって値上がりしていく一方だし、あの頃と同じで、やっぱり大人になっても、好きなものを買うことなんてできない毎日。
逆に、子どもの頃は気にしていなかった家賃や携帯料金まで気になるようになって。
あの時は娯楽の好きなものを我慢するだけでよかったのに、今ではそれにプラスして食費まで我慢しなくちゃいけなくなっている。
子どもの頃は何も考えないで暮らしていたのに、大人になると大変なんだなぁ、と、家計簿を見つめて私は思った。
【子供の頃は】
刺激のある毎日なんて求めません。
平凡でありきたりな日常を求めています。
好きな人が既婚者で、交際をするなんて危険な橋を渡りたくありません。
人の幸せを奪って幸せを掴むのは辛い。
借金をしていつかあたるかも、というギャンブルはしたくありません。
みるみる減っていくお金と、次こそは、の次が全くこないいたちごっこは辛い。
生活が苦しくて、法を犯すことはしたくありません。
最初こそあった罪悪感を忘れ、それが当たり前という狂った思想は辛い。
平凡でありきたりな日常に飽きた人が、新たな挑戦と銘打って、自ら危ない領域に足を突っ込まないように。
いつもの日常がいかに大切だったのか、わかってほしいだけなのです。
【日常】
小さい時、好きな色は?、と聞かれたら、赤とか青とかピンクとか、みんなが知ってる色を即答していた。
ヒーローっぽいから赤!、男の子だから青!、女の子だからピンク!
今なら差別問題だったけど、幼稚園にもいかないくらいの年の頃は、大体そんなかんじだった。
少し大きくなってくると、意識をして好きな色を問われれば言うようになった。
紫と答えるとエローい、とか煽られるようになったり、黄色と答えるとカレー好きなの?、とか言われるようになった。
とんでもない偏見だけど、思春期なるかならないかの子どもは、そんなかんじだった。
大人になると語彙力も増えて好きな色にレパートリーが増えた。
肌が白いから服は映える青が好き、部屋の色は飽きないように白みたいなアイボリーが好き、なんて。
おかしいな。好きな色のはずなのに、直感じゃなくて用途で好きな色が変わってきた。
小さい頃は即答していた好きな色、大きくなって人の目を気にするように好きな色も考えて、大人になったら好きな色がその都度変わっていた。
あなたは好きな色、即答できますか?
【好きな色】
一人だと分かち合うことはできない。
例えば、あなたの目の前で盛大に転んで笑いあうとか。
一人だと自分のバカさに嫌気がさして惨めになっちゃうところだけど、あなたがいたから笑い話になった。
例えば、あなたが辛い時、私が辛い時に、慰めあったりとか。
一人だと自分を自分で慰めるなんて難しいけど、あなたがいたから心が軽くなった。
嬉しいことも、悲しいことも、楽しいことも、辛いことも。
誰かと分かち合うことでプラスに変わることがある。
誰かじゃなくて、あなただと、更にプラスに変わることができるんだ。
大好きなあなたがいたから、毎日が幸せで楽しくて生きていられました。
先に逝ってよまうけれど、あっちであなたがくるのを待ってますよ。
【あなたがいたから】
高校生にもなって、相合傘なんてできない。
教室の窓から、しとしとと降っている雨をみて俺はそう思った。
仲良しのキャッキャいってる女子同士ならまだしも、男同士なんて様にならないし、異性とならば冷やかしの的だ。
雨は止まないかと雨雲レーダーを見るも、残念なことに三日間くらいは降り続くらしい。
傘を忘れた。弱ったものだ。夜から降ると言ってたはずなのに。
今は五時限目。ご飯も食べていい感じの眠気の中、ぼんやりと雨を眺めて、なんとなくノートに目をうつす。
ノートのすみに、傘のマークを描いた。
小学生時代に片方に自分の名前、片方に好きな人の名前を書くあれだ。
実際には相合傘なんて無理だけれども。
俺は相合傘の左側に自分の名前を書く。もう片方に書く名前は……。
最初に気にしていたしとしと降る雨よりも、今は相合傘の右側の名前の人を気にしている俺だった。
【相合傘】