喜村

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 高校生にもなって、相合傘なんてできない。
 教室の窓から、しとしとと降っている雨をみて俺はそう思った。
 仲良しのキャッキャいってる女子同士ならまだしも、男同士なんて様にならないし、異性とならば冷やかしの的だ。
 雨は止まないかと雨雲レーダーを見るも、残念なことに三日間くらいは降り続くらしい。
 傘を忘れた。弱ったものだ。夜から降ると言ってたはずなのに。

 今は五時限目。ご飯も食べていい感じの眠気の中、ぼんやりと雨を眺めて、なんとなくノートに目をうつす。
 ノートのすみに、傘のマークを描いた。
小学生時代に片方に自分の名前、片方に好きな人の名前を書くあれだ。
 実際には相合傘なんて無理だけれども。
俺は相合傘の左側に自分の名前を書く。もう片方に書く名前は……。
 最初に気にしていたしとしと降る雨よりも、今は相合傘の右側の名前の人を気にしている俺だった。


【相合傘】

6/19/2023, 10:59:32 AM