喜村

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6/15/2023, 10:21:54 AM

 俺はまだ、好きな本に巡りあえていない。
表紙を見て、気になった本でも、読んでみると表紙負けというか、さほどでもなかったり。
もくじを見て、このタイトル面白そうと思っても、なんだかしっくりこなかったり。

 読書の秋とは言うけれど、この梅雨の時期もまた、俺にとっては読書の季節である。
 好きな本に巡りあってないだけであり、読書が嫌いな訳ではない。逆に人より読んでいる方だ。
こんなに読んでいるのに、心の底からグッとくる本と巡りあえないのだから……

 俺は、本を書いてみた。俺好みの俺の本。
好きな本がないなら、好きな本を作ればいい。
 雨音をBGMに、筆が進む。
これが俺の好きな本だ。

【好きな本】

6/14/2023, 11:09:47 AM

 今日の天気は雨のち曇り、時々晴れ。
いやいやどんな天気だよ。一体メインはどれなのよ。
 俺は歯磨きしながら天気予報をみていた。
 窓からは光が射しているように見えるが、雨音も聞こえてくる。
 こういうあいまいな空の時は傘を折り畳みにするか、普通のにするか悩む。
普通ので行くともし晴れたら忘れそう、雨が強かったら折り畳みだと処理含めて面倒だ。
「やばー! 遅刻するー! お兄ちゃんよけて!」
 思い切り妹に背中を押されて、歯磨き中の口の中のものが出た。
「やだもー! 汚い!」
「お前が押したんだろ!」
「今日晴れ?」
「雨のち曇りで時々晴れだって」
「何そのどれきてもアタリですみたいな天気」
 妹の切れのあるツッコミにまた吹き出した。
 あいまいな空だが、それもまた思春期の妹とのトークのネタになるので、まぁいいか、と俺は考えた。


【あいまいな空】

6/13/2023, 12:05:47 PM

 梅雨の時期になると、僕の活動時期になる。
雨が降ると体をだして、ゆっくりゆっくり進む。
 僕の名前はカタツムリ。
たまに晴れた時は人間に水をかけられたり、動いていると顔をツンツンしていじめてくる。
だから僕は、人間が嫌いだ。

 そんな僕の隠れ家は、あじさい。
どうやら、人間はあじさいの葉っぱを食べると毒でやられてしまうらしい。
 鑑賞として人間はよってくるけど、滅多に触ったりはしない。
 だから僕は、あじさいの葉っぱを闊歩する。
表も堂々と行く。葉っぱが不安定だからか、あまり触ってきたり邪魔する輩はいない。
雨が降れば、葉っぱの裏で雨宿りもする。

 葉っぱばかりお世話になっているけれども、もちろん、あじさいの花も綺麗だ。
 人間はガクのことを花びらだと勘違いしているみたいだけど、本当はこの小さな粒々なんだよ。

 この季節は雨だから人間の行動も少なくなる。
僕とあじさいの季節は、梅雨が始まると同時にスタートするのだ。

6/12/2023, 10:30:14 AM

 君は花を持ってきて、笑顔で僕に聞く。
「花占いって知ってる?」
 六枚しか花びらがない白い花を押し付けてきた。
「……好き、嫌い、って言いながら、花びら摘まむやつ?」
「そうそう!」
 君はにこにこしていたが、僕は小さくため息をつく。
「数えられるやつだと、逆算して好きで終わるか 嫌いで終わるかわかっちゃうんだよ?」
「そうなの?」
 君はつまらなそうに口を尖らせたが、何かを思い出したかのように、それじゃあ、と、次の花を持ってきた。
「これなら、わからないでしょ?」
 僕は唖然とした。持ってきたのは、あじさいだった。
「……これ、どこが花びらか分かっていってる?」
 君ははにかみながら、さあ?、と悪びれずに答えた。
 こういう君の適当なところが、嫌いで好きなんだよな、と、僕は笑った。
 紫色のあじさいも、小さな花を咲かせて、まさに、お花が笑った感じがした。


【好き嫌い】

6/11/2023, 12:04:36 PM

 かつて、街として栄えていたこの場所。
今では立派なシャッター通り。

 当時は沢山の飲食店や服、インテリア屋さんがあった。
 しかし今となれば、シャッターは閉まりっぱし、アーケードの中を歩いても人はいない。
店の入り口と思われる所にはスプレーで落書きも多々見受けられる。
 開発土地だ、なんて、囃し立てられて、たくさんの店が建った、よくわからない政党の事務所とかもあった。
 でも今は治安が悪いと言われるくらい落ちぶれて、色んな人がこの街を出ていった。

 あの時の活気はもう戻ってこないのだろうか、たくさんの人が行き交い、色んな買い物をしたり、それぞれの生活があったあの街は。
 吹きさらしになったアーケード、今は管理者もいなく廃れていく一方のこの街で、私はまだひっそりと暮らしています。


【街】

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