喜村

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4/15/2023, 1:24:35 PM

 四月の半ば、こんな新生活の時期に、私の地元で同窓会があった。地元とは疎遠となり、かれこれ十年ぶりの同窓会参加である。
毎年同窓会は通例で行っていたらしいが、最近の流行り病の影響か、同窓会自体が四年ぶりのようだ。

 十年も会っていないと色んなことが変わる。
まさか担任の先生が亡くなっていたことも知らなかったし、海外に行ってしまった同級生がいることも驚きだった。
 みんな良い大人になったんだなぁ、と感心してしまう。

 そんな中、私は夢を追いかけて上京して、色々踠いたが夢は疎かになって、十年ぶりの帰郷。情けなくて、本当はこの場を離れたいくらいだった。
でも、少しだけ下心があって参加をした。
 同級生の女の子、私の初恋の相手である。
当時は可愛らしいツインテールで目はくりくりで、えくぼがあって、お人形さんのような女の子。

 しかし、現実は無情にもそれを打ち砕く。
「ママ~、おりがみ折って~」
「えー、今~?」
 その初恋の女の子は『ママ』になっていた。
隣には、私が初恋をした当時のままのような、女の子が座っている。
--そうか、ママ、か。
 今でも彼女のことが気になっていたのだが、この気持ちは伝えられそうにない、届かぬ思いとなってしまった。
 宴会ムードで騒がしいはずなのに、何故か私の回りだけ無音になっていた。
 


【届かぬ思い】

4/14/2023, 12:46:38 PM

 もし神様がいるのならば、ねぇ、神様、どうして私にこんな試練を与えるのですか?
私なら耐えられるぎりぎりの試練を与えているのですか?

 母に捨てられ、父に犯され、クラスメイトにいじめられ、好きな人に先立たれ、育児でお金も時間もない。

 神様へ、私は何か悪いことをしましたか?

 せめての救いは、この子の成長を見届けれることでしょうか。
これで私まで事故や病気で、この子をおいて死んでしまったら、それこそ死にきれない。

 神様は残酷だ、それかいないのかもしれない。
でも、もしいるのであれば、良心を持ち合わせている神様ならば。

 神様へ、ノドカが一人立ちできるまでは、生きさせて下さい。


【神様へ】
※シリーズのものをまとめた続編

4/13/2023, 12:03:23 PM

 雲一つない空だった。
澄みきった青空が広がっている。
電線の上で楽しそうに小鳥たちがさえずっていた。
 本日は快晴。
春の穏やかな陽気に包まれている。
珍しく風もそよ風程度である。

 こんなに気持ちの良い春の気候なのに、どうして私は仕事をしているんだろう。
窓からお気持ち程度の空の様子はみてとれるが、鳴り止まないクレームのコール音。
 みんな一回外に出ようよ、そのクレームは本当に必要なものですか?
気持ちの良い日差しを浴びて、心を浄化してから、そのクレームをもう一度考え直してみてよ。
 いや、もしかしたら、クレームを伝えたことによって、快晴な気持ちになる人もいるかもしれないけれど。
 快晴の日は、毎度そう思う私なのでした。



【快晴】

4/12/2023, 10:58:24 AM

 新生活が始まり、私は上京した。
地元は空気がうまいとは言いきれないが、ここよりは断然うまい。
音もこんな雑踏の騒々しい音は聞こえず、たまに車や鳥の鳴き声が聞こえるくらいで静かだった。
 空を見上げようにも、ビルや高い建物に邪魔されて、青空を拝むことも難しい。

 随分と遠くへ来てしまったのだなぁ。

 空は続いているとは言うけれど、本当に地元にまでこの空は続いているのだろうか。
この小さくしか映っていない青空を辿っていけば、地元に辿り着くのだろうか。
 これがいわゆるホームシックなのか、まだ上京して二週間なのに。
遠くの空へ想いを馳せた。


【遠くの空へ】

4/11/2023, 12:33:37 PM

 小さい頃に、生死をさ迷った。
どういう状況なのかわからないし、どう回復したのかも記憶にはない。
つまりは、それくらい幼い頃に私は死にかけたのだ。

 その影響で、私の視界から色がなくなった。
物心ついた頃には、モノクロの世界が広がっていた。
生まれた頃はそうではなかったのだろうけれど、白と黒の強弱のついた世界が私の見える全てだった。
 これは赤、これは緑、など、教えられてもよくわからなかった。

 そんな世界に、ある日突然、色がついた。
誕生日プレゼントに、色がわかる特殊なメガネをもらったのだ。
 燃えるような赤い夕日に、庭の芝生の緑色、飼い猫の茶トラ模様も、全て、ハッキリとまでは言えないのかも知れないが、色があった。
 みんなが当たり前に見えていて、そんなこと?、と思うかも知れないが、私にとっては本当に、言葉にできないほどの感激があった。
色付いた世界に出会えた。

【言葉にできない】

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