四月の半ば、こんな新生活の時期に、私の地元で同窓会があった。地元とは疎遠となり、かれこれ十年ぶりの同窓会参加である。
毎年同窓会は通例で行っていたらしいが、最近の流行り病の影響か、同窓会自体が四年ぶりのようだ。
十年も会っていないと色んなことが変わる。
まさか担任の先生が亡くなっていたことも知らなかったし、海外に行ってしまった同級生がいることも驚きだった。
みんな良い大人になったんだなぁ、と感心してしまう。
そんな中、私は夢を追いかけて上京して、色々踠いたが夢は疎かになって、十年ぶりの帰郷。情けなくて、本当はこの場を離れたいくらいだった。
でも、少しだけ下心があって参加をした。
同級生の女の子、私の初恋の相手である。
当時は可愛らしいツインテールで目はくりくりで、えくぼがあって、お人形さんのような女の子。
しかし、現実は無情にもそれを打ち砕く。
「ママ~、おりがみ折って~」
「えー、今~?」
その初恋の女の子は『ママ』になっていた。
隣には、私が初恋をした当時のままのような、女の子が座っている。
--そうか、ママ、か。
今でも彼女のことが気になっていたのだが、この気持ちは伝えられそうにない、届かぬ思いとなってしまった。
宴会ムードで騒がしいはずなのに、何故か私の回りだけ無音になっていた。
【届かぬ思い】
もし神様がいるのならば、ねぇ、神様、どうして私にこんな試練を与えるのですか?
私なら耐えられるぎりぎりの試練を与えているのですか?
母に捨てられ、父に犯され、クラスメイトにいじめられ、好きな人に先立たれ、育児でお金も時間もない。
神様へ、私は何か悪いことをしましたか?
せめての救いは、この子の成長を見届けれることでしょうか。
これで私まで事故や病気で、この子をおいて死んでしまったら、それこそ死にきれない。
神様は残酷だ、それかいないのかもしれない。
でも、もしいるのであれば、良心を持ち合わせている神様ならば。
神様へ、ノドカが一人立ちできるまでは、生きさせて下さい。
【神様へ】
※シリーズのものをまとめた続編
雲一つない空だった。
澄みきった青空が広がっている。
電線の上で楽しそうに小鳥たちがさえずっていた。
本日は快晴。
春の穏やかな陽気に包まれている。
珍しく風もそよ風程度である。
こんなに気持ちの良い春の気候なのに、どうして私は仕事をしているんだろう。
窓からお気持ち程度の空の様子はみてとれるが、鳴り止まないクレームのコール音。
みんな一回外に出ようよ、そのクレームは本当に必要なものですか?
気持ちの良い日差しを浴びて、心を浄化してから、そのクレームをもう一度考え直してみてよ。
いや、もしかしたら、クレームを伝えたことによって、快晴な気持ちになる人もいるかもしれないけれど。
快晴の日は、毎度そう思う私なのでした。
【快晴】
新生活が始まり、私は上京した。
地元は空気がうまいとは言いきれないが、ここよりは断然うまい。
音もこんな雑踏の騒々しい音は聞こえず、たまに車や鳥の鳴き声が聞こえるくらいで静かだった。
空を見上げようにも、ビルや高い建物に邪魔されて、青空を拝むことも難しい。
随分と遠くへ来てしまったのだなぁ。
空は続いているとは言うけれど、本当に地元にまでこの空は続いているのだろうか。
この小さくしか映っていない青空を辿っていけば、地元に辿り着くのだろうか。
これがいわゆるホームシックなのか、まだ上京して二週間なのに。
遠くの空へ想いを馳せた。
【遠くの空へ】
小さい頃に、生死をさ迷った。
どういう状況なのかわからないし、どう回復したのかも記憶にはない。
つまりは、それくらい幼い頃に私は死にかけたのだ。
その影響で、私の視界から色がなくなった。
物心ついた頃には、モノクロの世界が広がっていた。
生まれた頃はそうではなかったのだろうけれど、白と黒の強弱のついた世界が私の見える全てだった。
これは赤、これは緑、など、教えられてもよくわからなかった。
そんな世界に、ある日突然、色がついた。
誕生日プレゼントに、色がわかる特殊なメガネをもらったのだ。
燃えるような赤い夕日に、庭の芝生の緑色、飼い猫の茶トラ模様も、全て、ハッキリとまでは言えないのかも知れないが、色があった。
みんなが当たり前に見えていて、そんなこと?、と思うかも知れないが、私にとっては本当に、言葉にできないほどの感激があった。
色付いた世界に出会えた。
【言葉にできない】