あるところに もりのがっこうが ありました。 せんせいが
「じぶんの たいせつなものを おしえてください」
と、 いいます。
うさぎちゃんは にんじんを、
らいおんくんは おにくを、
からすさんは ぴかぴかの ほうせきを、
ことりさんは じぶんのこえを、
みんな それぞれの たいせつなものを おしえました。
しかし せんせいは、 なんだか かなしそう。せんせいは いいました。
「ほんとうに たいせつなものは、 だれにも おしえては いけません」
そして、 こう つづけます。
「たとえ なかよしの おともだち。 たとえ かけがえのない かぞく。 それでも じぶんの いちばん たいせつなものは、 おしえては、 いけません」
みんな、 なんで? と、 くちをそろえて くびをかしげます。
「それは、 おおきくなったら きっと わかりますよ。 いまは わからなくても、 おぼえておいて くださいね」
せんせいは そういいました。
【大切なもの】
4月1日は嘘をついても良い日。
嘘をついていいのは午前中までで、午後からはネタバラシタイムだよ。
小さい頃からみんな通った道。テレビとかでもよくこの題材を取り上げている。
でも、本当のことを嘘だと決めつける人もいる。なにもかも、この日だからだ。
「え? ともかちゃん今日誕生日なの?」
「うそ~!? エイプリルフールだから嘘ついてるんでしょ」
毎年、このやりとりをする。
嘘じゃないんだ。本当なのよ。終いには、私も誕生日~、と煽ってくる人さえもいる。
誕生日順に並ぶと、私は一番最後。その年の一番最後は4月1日生まれなのだ。
4月生まれの同学年とまるっと一年違うわけで、小さい時は体型差もすごかったが、
「ガチの誕生日なんだからプレゼントちょうだいよ」
と、態度はすごく大きく育ちました。
嘘をついてもいいのが、4月1日のエイプリルフールだけど、私の誕生日もその日だから、覚えててよね?
【エイプリルフール】
バレンタインデーの時に手作りチョコレートを先輩に渡した。正式には、渡してもらった。
その中にはメッセージカードも忍ばせており、私のSNSやメールアドレス、ラインに至るまで、私の連絡つけれるものを全て書いた。
ダメ元だったけど、まさか本当に返事がくるなんて。
『チョコレートありがとう、おいしかったよ』
すごく嬉しくて、心の中で嬉しい悲鳴を轟かせる。
しかし、その後にまたメッセージが続く。
『実は、俺には彼女がいるんだよね』
嬉しい悲鳴が悲しみの悲鳴になる。
--まさか……聞いてない、みたことない。
きっと嘘だと思ったのだが、返事をうつ暇を与えずにまたメッセージがくる。
『でも、チョコレートや気持ちは本当に嬉しかったよ、だからメッセージ送ってるんだ』
もう、スマホを見ているのにめまいがすり。
指が震えて返事がうてない。頭が真っ白で、目の前は真っ暗。
信じられない、信じたくもない。何かの嘘であってほしい。
『彼女は年上だから、彼女がいる素振りしてなかったから、知らなかったのも無理ないけど……』
「やめて……」
思わず、口からついてでた。私の声。
震える指で返事をなんとか打った。そして、送信した。
『お幸せに』
【幸せに】
※【何気ないふり】の続き
俺には年上の彼女がいる。
俺は高校二年生、彼女は大学三年生だ。
現在就活であう頻度がとても減った。
「おいウエダ、気ぃ抜けてんぞ!」
三学期始まってすぐの頃、もう俺は彼女のことで頭がいっぱいだった。
まわりには迷惑かけないように、バイトも部活も勉強も頑張って、何気ないふりをしていたが、限界がある。
そんなある日、部活中に一人の女の子が明らかに教室の窓から俺を見ていることに気付く。
気のせいではなく、文字通り食い入ってかじりついてみているのだ。
別の日、バイト先のレストランでは、ディナータイムでウエイティング用紙に名前を書いて、お客様を待たせていた。
「お待たせ致しました、二名でお待ちのミナ様」
そうご案内をすると、あの窓から見ていた女の子が元気よく返事をした。連れは短髪のボーイッシュな女の子のようだ。制服姿が別なので他校の友達の様子。
こちらへ、とご案内をし、水まで出してから、気になりすぎて俺から声をかける。
「あの……ミナ様は」
「様じゃなくていいです! ちゃん、で大丈夫です!」
「えっと……ミナちゃんは、俺に何か御用ですか?」
ミナちゃんは顔を真っ赤にさせる。文字通りの、真っ赤だ。
「いえ!? 別に!」
「いいの?」
「いいの!」
友人の言葉も切り捨てるようにする。
「ええっと……じゃあ、何年生?」
「1年◯組です!」
一つ下で◯組といったら、部活の後輩に一人いることを思い出す。
その場はそこで席を後にし、何気ないふりをしながら勤務していたが、俺は後日、後輩を呼び出した。
「お前のクラスのミナちゃん? だっけ? あの子、最近、俺のバイト先に来たりよく俺の事見てる気がするんだけどさ……俺には年上の大学生の彼女がいるから、ごめんねって言ってくれないかな?」
まだ告白された訳でもない思い上がりかもしれないけれども、間違いなく、あれはそういう態度だ。
それを後輩に向かって伝えてというのも変な話ではあるけれども。
これ以上付きまとわれていては、何気ないふりは難しい。
【何気ないふり】
※【伝えたい】の前の話にあたります
どうしてハッピーエンドだけが受け入れられるのだろう。
幸福感だけをみんなは欲しているの?
俺はいわゆる創作活動をしている。
内容的には、ファンタジー系を書けば、パーティーの主要メンバーが尊い犠牲になったり、主人公が闇落ちしたり。
恋愛系を書けば、何をやっても報われず、手に入れた恋人さえも手放すか自分が身を引くかの二択を選ばせ幸せの道を閉ざしてみたり。
他人の不幸は蜜の味とはよくいったものだ。
現実世界ではハッピーエンドしか受け入れてもらえないのは理解できるが、ここは俺が作った人とストーリー。だからいくらでもバッドエンドが成立できるのだが……
「君はこの作品で何を伝えたいのかな? どんな人に読んでもらいたいの? そういうのがないなら連載は難しいね。独りよがりの作品止まりだよ」
もう、何回このセリフを聞いただろうか。
そろそろ俺にもハッピーエンドとして、作家デビュー、できませんかね?
【ハッピーエンド】