生きたい。
誰もがみんな、そう思っていると思う?
生にしがみつくことを醜く思う人もいるであろう。
死にたがりの人もいるであろう。
病に伏している人を見て、誰もがみんな、生きて、と、頑張れ、と応援する。
当の本人は、頑張ってまでこの病と戦うことをよしとするであろうか。
諦めて楽に逝かせてと願っているのに、生きろ頑張れと応援するなんとも身勝手な行為。
管だらけの自分をみて、そこまでしてでも生きなくてはいけないのだろうか。
そこまでして生にしがみついて、その後、どんな暮らしがあると言うのであろう。
痛い思いをして手術をして、辛い思いをしてリハビリや治療にあたる。そしてまわりは、生きろ頑張れと囃し立てる。
誰もがみんな、生きたい訳ではない。
【誰もがみんな】
街はバレンタインデームード一色だ。
私は料理が得意ではない、むしろ壊滅的にできない。
すれ違う女の子はチョコレートを買いに、デパートやコンビニ、スーパーへと吸い込まれていく。
一応、私にも彼氏ができた。まだ付き合って半年くらいである。
イベントごとなので、作ってあげたい気持ちはあるが、気持ちと実力が毎度伴わない。
彼氏と並んで歩いているにも関わらず、私はため息をついてしまった。
「どうしたの?」
気がついた彼氏が問う。
なんでもないふりを取り繕ったが、私の目線はお菓子やさんのショーウィンドウに向いていたようだ。
「あー、言ってなかったけど、俺、甘いもの苦手なんだよね」
「そうなの!?」
思わず私は叫んだ。
「うん、バレンタインデーでチョコレートとか貰っても全部親にあげてたし」
私を気遣っての嘘か本当かはわからないけれど、私は、ならば!、とバレンタインデーのチョコにかわるものを思いついた。
花束なんてどうだろう。
ドライフラワーとかもおしゃれでよさそうだけど、ちょっと寒そうで寂しげなので、温感色の花束。
バレンタインデーだから、赤やピンクとかの花ばなで。うん、そうしよう!
一人納得した私をみて、彼氏は不思議そうにしていた。
【花束】
私の彼氏は全く笑わない。
無表情で、私のことをカメラでパシャパシャとおさめるだけ。
逆に私が撮ろうとすると、物凄く嫌そうな顔をする。
逆のことを嫌がるなら私にもしないでほしいよね?
私は彼氏の笑顔を見たことがない。
はにかんだり、照れたりした表情はあるけれど、にっこりスマイルなんて程遠い。
今日は真冬の海デート。冬だから人もまばらだし、思う存分笑ってくれるかな、と。
人目を気にして笑わないのか、本当に毎日私といてつまらないから笑わないのかはわからないけれども。
逆光になって写真を撮って私の美しさに見とれたり、砂浜に愛の告白を書いて照れたり、いいところまではいったんだけどなぁ……
帰り道、名残惜しくて彼氏の手を繋いでみた。私から。
「んふふ」
「……え?」
今、彼氏、笑った?
え? なんで笑った?
「ど、どうしたの!?」
「可愛いなって思って」
さらっと嬉しいことを彼氏が言ってくれた。
可愛いから、笑ったの!?
「私、もっと可愛くなる!」
彼氏はめちゃくちゃ笑ってくれた。
何がツボかはわからなかったけれども、私の本日の《彼氏をスマイルにさせる》目標は達成された。
私も一緒になってスマイルになった。
笑顔って伝染するんだね、幸せな伝染だ。
【スマイル】
※【I LOVE…】の彼女目線続編
誰にも言えない、どこにも書けないことって、みんなどうしてる?
私は心に留めるなんてことはできなくて、誰かに言いたいけどそれもダメというのなら……
小学生の時から続けている、日記に記している。
中学一年生で、部活が始まってから、私は酷いいじめにあった。
物は壊され、失くされ、隠され、水はかけられ汚物は置かれ、凶器までもが目立たぬ何処かに潜んでいた。
友達には無視され、先生も味方ではなく、親はほぼ家にいない。
もう八方塞がりで、何もできなくてただ病んでいく。
そんな時、吐き出したいから、鍵付きの日記帳に思いを綴った。
今はやりのSNSなんかに書いたら、すぐに誰かにばれたり、スクリーンショットであっという間に拡散されてしまう。
アナログだけれども、どこにも書けないことは、鍵をつけて日記に書くことを私はオススメするよ。
過去の日記は誰にも見せれないけれど、未来の私が見たらどんなことを思うかな?
どこにも書けなくて、誰にも言えなくて、辛かったよね、って、一緒に泣いてくれるかな?
【どこにも書けないこと】
※【閉ざされた日記】【特別な夜】他、の続き(時間軸的には前の話)
時計の針は巻き戻ってくれる訳ではなく。
ただただ前に進んでいく。
たまに故障して止まることはあるけど。
直ればまた先へと進んで行く。
「時計の針であれ」
母が言った。
人生、苦しいことや辛いことで止まることがあるだろう。動けなくなることはあるだろう。
過去に戻ろうにも戻ることはできない。
ただ前に進んで行け。
たとえ動けなくなっても、故障の原因が分かれば、止まった針が動くように。
人生という道は長くて険しい。
でも、時計の針のように、少しずつでも、ただただ前に進んで行け、と。
【時計の針】