喜村

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 街はバレンタインデームード一色だ。
私は料理が得意ではない、むしろ壊滅的にできない。
すれ違う女の子はチョコレートを買いに、デパートやコンビニ、スーパーへと吸い込まれていく。
 一応、私にも彼氏ができた。まだ付き合って半年くらいである。
イベントごとなので、作ってあげたい気持ちはあるが、気持ちと実力が毎度伴わない。
 彼氏と並んで歩いているにも関わらず、私はため息をついてしまった。
「どうしたの?」
 気がついた彼氏が問う。
なんでもないふりを取り繕ったが、私の目線はお菓子やさんのショーウィンドウに向いていたようだ。
「あー、言ってなかったけど、俺、甘いもの苦手なんだよね」
「そうなの!?」
 思わず私は叫んだ。
「うん、バレンタインデーでチョコレートとか貰っても全部親にあげてたし」
 私を気遣っての嘘か本当かはわからないけれど、私は、ならば!、とバレンタインデーのチョコにかわるものを思いついた。
 花束なんてどうだろう。
 ドライフラワーとかもおしゃれでよさそうだけど、ちょっと寒そうで寂しげなので、温感色の花束。
バレンタインデーだから、赤やピンクとかの花ばなで。うん、そうしよう!
 一人納得した私をみて、彼氏は不思議そうにしていた。


【花束】

2/9/2023, 10:21:47 AM