喜村

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2/8/2023, 11:30:34 AM

 私の彼氏は全く笑わない。
無表情で、私のことをカメラでパシャパシャとおさめるだけ。
 逆に私が撮ろうとすると、物凄く嫌そうな顔をする。
逆のことを嫌がるなら私にもしないでほしいよね?

 私は彼氏の笑顔を見たことがない。
はにかんだり、照れたりした表情はあるけれど、にっこりスマイルなんて程遠い。
 今日は真冬の海デート。冬だから人もまばらだし、思う存分笑ってくれるかな、と。
人目を気にして笑わないのか、本当に毎日私といてつまらないから笑わないのかはわからないけれども。

 逆光になって写真を撮って私の美しさに見とれたり、砂浜に愛の告白を書いて照れたり、いいところまではいったんだけどなぁ……

 帰り道、名残惜しくて彼氏の手を繋いでみた。私から。
「んふふ」
「……え?」
 今、彼氏、笑った?
え? なんで笑った?
「ど、どうしたの!?」
「可愛いなって思って」
 さらっと嬉しいことを彼氏が言ってくれた。
可愛いから、笑ったの!?
「私、もっと可愛くなる!」
 彼氏はめちゃくちゃ笑ってくれた。
何がツボかはわからなかったけれども、私の本日の《彼氏をスマイルにさせる》目標は達成された。
 私も一緒になってスマイルになった。
笑顔って伝染するんだね、幸せな伝染だ。


【スマイル】
※【I LOVE…】の彼女目線続編

2/7/2023, 12:32:02 PM

 誰にも言えない、どこにも書けないことって、みんなどうしてる?
 私は心に留めるなんてことはできなくて、誰かに言いたいけどそれもダメというのなら……
小学生の時から続けている、日記に記している。

 中学一年生で、部活が始まってから、私は酷いいじめにあった。
物は壊され、失くされ、隠され、水はかけられ汚物は置かれ、凶器までもが目立たぬ何処かに潜んでいた。
友達には無視され、先生も味方ではなく、親はほぼ家にいない。
 もう八方塞がりで、何もできなくてただ病んでいく。

 そんな時、吐き出したいから、鍵付きの日記帳に思いを綴った。
今はやりのSNSなんかに書いたら、すぐに誰かにばれたり、スクリーンショットであっという間に拡散されてしまう。
 アナログだけれども、どこにも書けないことは、鍵をつけて日記に書くことを私はオススメするよ。

 過去の日記は誰にも見せれないけれど、未来の私が見たらどんなことを思うかな?
どこにも書けなくて、誰にも言えなくて、辛かったよね、って、一緒に泣いてくれるかな?

【どこにも書けないこと】
※【閉ざされた日記】【特別な夜】他、の続き(時間軸的には前の話)

2/6/2023, 1:12:15 PM

 時計の針は巻き戻ってくれる訳ではなく。
ただただ前に進んでいく。
たまに故障して止まることはあるけど。
直ればまた先へと進んで行く。

 「時計の針であれ」
 母が言った。

 人生、苦しいことや辛いことで止まることがあるだろう。動けなくなることはあるだろう。
過去に戻ろうにも戻ることはできない。
ただ前に進んで行け。
たとえ動けなくなっても、故障の原因が分かれば、止まった針が動くように。

 人生という道は長くて険しい。
でも、時計の針のように、少しずつでも、ただただ前に進んで行け、と。

【時計の針】

2/5/2023, 11:12:51 AM

《私に会ってくれませんか?》
 このメールを送って、もう何日が経ったのだろう。
 私はあなたからの返事を待っているのに、全く音沙汰がない。
タイムラインは更新されているのに、どうして返事がないのだろう。
 あなたからの返事を待っているこの時間さえも、どんどんあなたへの思いが溢れ出てくる。
今何をしているのかはタイムラインを見てなんとなく分かっているし、なんなら私以外の誰かとやり取りしているのも、表でみえている分にはわかっている。

……どうして?

 どうして返事をくれないの?
こんなに私は愛しているのに。それに答えず他の人とやり取りしているなんて。

 彼のタイムラインにラーメン屋があった。
ここは近くはないが、チェーン店じゃなくそこにしかない店--電車で片道二時間くらい。
毎週金曜日の仕事終わりに行く、仕事の定時が夜七時だから……。
 考えはまとまった。あっという間だった。
 直接伝えよう。この溢れる気持ちを。
待っててね、大好き。


【溢れる気持ち】
※【君に会いたくて】の続き

2/4/2023, 11:37:13 AM

「ユウカちゃん、次のデートどうする?」
 僕の初恋の相手、ワタナベさんはうきうきしながら聞いてくる。
 ここまで打ち解けるまで、本当に長かった。
クラスメイトからいじめられて、鎖でぐるぐる巻きだった彼女に、ようやく心からの笑顔を出せるようにしたのだから。
でもきっと、彼女は簡単にまた扉を閉ざすこともできるであろう。僕はそうならないように毎日最新の注意を払っている。
「聞いてる~? ずーっと怖い顔してるよ?」
「……真剣に考えてる」
「あはは、そっかー!」
 彼女は僕より一歩前を歩き始める。
「でも、私は笑顔のユウカちゃんが好きだよー?」
 この子はすぐに僕に好き好き言ってくる。
嬉しいけど恥ずかしい。
「僕も、ワタナベさんにずっと笑顔でいてもらえると嬉しい」
 そういうと、彼女は立ち止まった。
変なことを言ったかな?、と、顔を覗き込むと。
「ちゅっ」
 ワタナベさんに、キスをされてしまった。
顔が一気に暑くなる。
「あはは、ユウカちゃん顔真っ赤~!」
 いたずらに笑い、彼女はまた僕の前を駆けていく。
キス一つでこんなに笑顔になってくれるなんて。
嬉しいけど恥ずかしい。

【kiss】
※【手袋】の続き

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