喜村

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「ユウカちゃん、次のデートどうする?」
 僕の初恋の相手、ワタナベさんはうきうきしながら聞いてくる。
 ここまで打ち解けるまで、本当に長かった。
クラスメイトからいじめられて、鎖でぐるぐる巻きだった彼女に、ようやく心からの笑顔を出せるようにしたのだから。
でもきっと、彼女は簡単にまた扉を閉ざすこともできるであろう。僕はそうならないように毎日最新の注意を払っている。
「聞いてる~? ずーっと怖い顔してるよ?」
「……真剣に考えてる」
「あはは、そっかー!」
 彼女は僕より一歩前を歩き始める。
「でも、私は笑顔のユウカちゃんが好きだよー?」
 この子はすぐに僕に好き好き言ってくる。
嬉しいけど恥ずかしい。
「僕も、ワタナベさんにずっと笑顔でいてもらえると嬉しい」
 そういうと、彼女は立ち止まった。
変なことを言ったかな?、と、顔を覗き込むと。
「ちゅっ」
 ワタナベさんに、キスをされてしまった。
顔が一気に暑くなる。
「あはは、ユウカちゃん顔真っ赤~!」
 いたずらに笑い、彼女はまた僕の前を駆けていく。
キス一つでこんなに笑顔になってくれるなんて。
嬉しいけど恥ずかしい。

【kiss】
※【手袋】の続き

2/4/2023, 11:37:13 AM