好きな人ができた。
まだ実際には会ったことがない。
写真も見たことはない。
声も聞いたことはない。
名前もハンドルネームしかしらない。
住んでる地域や年齢は教えてもらったけれど、身分証明書で確認した訳ではないので定かではない。
好きな人はネットの人。
いつも辛いときに、大丈夫?、と、声をかけてくれる。ダイレクトメールもくれる、優しい人。
依存しすぎて、その人が違う人と絡んでいると嫉妬してしまう。これって、好きだから嫉妬しちゃってるんだよね。
会いたいな。君に会いたくて仕方がない。
ネットのつながりから、一つ上の段階にいけるから。
そうしたら、ネットの中の特別な存在、って思われると思う。
会いたすぎて辛い。
文面だけじゃなくて、オフ会という形でも最初はいいから。
《私に会ってくれませんか?》
そう、メッセージを飛ばした。
【君に会いたくて】
姉ちゃんの遺品整理なるものの手伝いをすることになった。
いつも閉ざされていたカーテンを開け、換気をしながら姉ちゃんの部屋を片付ける。
あの日も、この窓を開け、そこから姉ちゃんは飛び降りたのか、と、若干胸が締め付けられそうになりながら。マンション20階、そりゃしんじゃうよね。
机はもう数ヶ月勉強をしていないからか、綺麗に元からなっていた。
しかし、僕は知っている。姉ちゃんの日課を。
まだ幼かった僕だったが、姉ちゃんの部屋に入ると、寝る前に書かさず姉ちゃんは日記をつけていた。
姉ちゃんは、小一の時の夏休みの宿題だった《絵日記》から習慣付いたと言っていた。
そして、その場所も僕は知っている。机の引き出し、上から二番目。
ガラリと開けると、小学生の時から亡くなる年のものまで並べてあった。
見てはいけないのかもしれないが、遺族として原因があるかもしれない、と、僕は日記を開いた。
いじめが始まったであろう年の日記から、日記帳に鍵がついていた。その鍵は--パッと辺りや引き出しを開けるが見当たらない。
まぁ、片付けをしている間にでもでてくるだろう。
小学生の頃、ほんの二、三年前の日記は、とても綺麗な字で、明るい内容のものばかりだった。
こんなこともあったな、そんなこともあったっけ、と、家族の内容が書いているものは僕まで口の端が緩んだ。
『明日から中学生! 授業が増えたり部活を始めたり、今から楽しみだなぁ♪』
僕らが読める日記はここまでだった。
この先、姉ちゃんにどんなことが起きたんだろう。
僕は閉ざされた日記が気になって、遺品整理という名の日記帳の鍵探しに奮闘した。
【閉ざされた日記】
※【どうして】の続きです。
どうして君は、そんなに強くボクを揺らすんだい?
ボクは悪いことは何もしていないのに、ボクの身ぐるみを剥がしていく。
《寒いよ! やめてよ!》
必死に叫んでも、嘲笑うかのようにボクを揺さぶる。
揺さぶられる度に、一枚また一枚とボクの着ているものを脱がしていく。
そしてついに、着ているものがなくなった。
辺りには、ボクの着ていたものが散らばっている。全てではなく、何枚かは吹き飛ばされているようだ。
ボクの身ぐるみを全て剥いでいったものの名は--木枯らし。
ボクはなす術なく、木枯らしにいじめられ、たくさん蓄えていた木の葉を全て枯らしてしまった。
【木枯らし】
人の感じる美しさは様々だ。
集合体をみて美しいと言う人がいれば、それを気持ち悪いと言う人もいる。
同系色のもので固めたイラストを美しいと言う人がいれば、それを何か物足りないと言う人もいる。
共通して美しいものと言えば、広大な自然美と圧巻の建築物と聞いたことがある。
確かに、だんだん白んでいき、神々しく徐々にあらわれる初日の出は美しく縁起の良いものとされる。
古代の技術で建てられた建築物は、その美しさや素晴らしさで文化遺産となることも多い。広く愛されているからこそ世界遺産となるのだ。
木の葉が風にそよぎ、サラサラと擦れる葉の隙間から、陽の光が差し込み、地面に不規則に降り注ぐその様は、美しいものだろう。
ライトアップされ、桜と共に映える何百前に建てられたお城やお社、自然美の効果も相まっているが、建築物だけでもさぞ美しいものだろう。
これが美しいものです、と一括りにすることは難しいものだろうが、少なくともこの二種類は美しいと言っても良いと思う。
【美しい】
最近いろんな小説で「異世界」をうたうものが多くある。
みんな現実世界が嫌なのだろうか、だから異世界を作り出して、そちらに逃げ出したいのだろうか。
確かにこの世界は残酷だ。
努力は報われるなんて言葉があるけれど、報われない努力のほうが圧倒的に多い。
遅くまで勉強して努力をしたのに、アラームにも気づかず寝坊してテストを受けられず、努力が無駄になったり、ね。
親のえごで生まれた子ども、それが今度は制度で生め生め言われる世界だ。
真面目にいきているのに、正直者がバカをみる詐欺師が高笑いをする世界だ。
こんなこの世界、逃げたしたくもなるよね。
幸せや嬉しいことよりも、明らかに辛いことや悲しいことのほうが多い。
ただ、こんなこともよく聞く『さいごは良いことしか思い出せない』と。
この世界から消える時は、この世界の良いことしか思い出せないようになるのだろうか。
こればかりは、最期にしかわからないことである。私の最期か、世界の最期か。
【この世界は】