喜村

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12/2/2022, 11:54:47 AM

 夜明け前が一番の闇だと、どこかで聞いたことがある。
 今から朝という清々しい幕開け前の、早朝5時頃。
今までの夜の暗さよりも、更に闇は深くなっていた。
 今から朝という光が差し込むというのに、最後の悪あがきのように、深くなる闇。

 このまま飲まれてしまう。そう思った時に、段々と空が白んでいくのだ。
 夜と朝が共存できないように、光と闇も共存できないのだろう。

 でも、逆の時間帯に、その共存の時間帯がある。

 夕方だ。
闇が深くなる前、じんわりと光が最後の一力をだすかのように、段々と闇に溶けて行く。

 夜明け前は、お互いの主張が激しい闇と光ではあるが、夕方は光と闇のうまく共存できている狭間なのかもしれない。

 そして人は、その狭間の時間帯をえらく気に入っている。
闇に染まりたくない、光に飲まれたくない。
 もしかしたら、人は皆、未完のものと言われているゆえんもそこにあるのではなかろうか。
どちらにも染まらず、完成はしない、染まりきれない狭間。
光と闇の狭間で、私たちは生きているのでは、と。


【光と闇の狭間で】

12/1/2022, 1:20:40 PM

 まだ自分が幼稚園の頃。
先生が好きすぎて、ずっとまとわりついていた。
でも、先生はみんなから大人気。
なんであの子としゃべってるの? その子はいじめられっこなのに。
 小さい頃なりの強い嫉妬を覚えた。

 親に甘えまくっていた時。
最初こそ、自分が長子だったから、とても優しく、なんでもお願いも聞き入れてくれた。
でもいつしか、弟がうまれ、愛情がまるっきり感じられなくなって。
初めて身内にまで強い嫉妬を覚えた。

 近付いてしまうから、こんな気持ちになるんだ。

 塾とバイトでは好きな人ができた。
幼少期の近付きすぎを踏まえ、遠く離れた場所から好きな人を見ていた。
すると、好きな人に近付く他の異性が気になり始めた。そのまま付き合うパターンも見せつけられた。
自分は思いを伝えることもできず、ただただ辛いだけであった。

 近付き過ぎると、ヒートアップして攻撃しそうになる。
 遠すぎると、思いを募らすだけで進展がなく虚しくなる。

 適度な距離、それは一体、どのくらいの距離なのだろう?


【距離】

11/30/2022, 11:53:21 AM

 好き同士で別れてしまったら、いいことなんてない、って聞いていたけど、本当だね。
 お互いの夢のために、二年半付き合っていた彼女と別れた。

 付き合ったのは、高校一年生の夏祭りの時。打ち上げ花火を見ながら
「もし、俺が付き合いたいって言ったらどうする?」
と、いう問いに、赤面しながら小さな声で、いいよ、と答えてくれたのが昨日のことのようだ。

 それから大きな喧嘩もせず、体育祭や文化祭、修学旅行も、二人だけの思い出も作った。

 でも、高校三年生に上がってからの君は、ずっと泣いていたね。
 戸惑う俺に、君が言った。
「外国の学校に行って、ハリウッドとかのメイクアップアーティストになりたい」
 ずっと思っていたのに、俺が枷になっていたのかな?

 受験が近づくにつれて、卒業が近づくにつれて、君は毎日のように泣いていた。
 泣かないで、そう言っても辛いだけのようで。

「……別れよっか、で、夢が叶ったら、また付き合ってくれないかな? 俺も、お笑い芸人の夢、叶えるから!」

 そう言って、別れて早半年。
別れていても、毎日電話をしている。電話越しで、毎日泣いているね。

「泣かないで……」
「じゃぁ、泣き止むようなネタしてみてよ」
「えぇ……」

 彼女を泣き止ませることができるネタができたら、俺も夢が叶う気がする。
今はまだ無理だから、口で、泣かないで、としか言えないけれど。
 俺も、がんばる。

【泣かないで】

11/29/2022, 12:32:33 PM

 外が暗くなるのが早くなった、朝日が昇るのが遅くなった。
なんだか乾燥し始めた、朝晩が寒くなった。
 そういう気候の変化で、あぁ、冬が始まったな、と思うのはごくごく普通。

 冬のはじまりは、秋のおわり。
時期的に、ハロウィーンが終わると冬の足音が聞こえ始める。
クリスマスソングやイルミネーションが始まったら、最早、冬。

 私的、気候的でも時期的でもない、冬のはじまりはこうだ。

 ふらっと入るコンビニエンスストア。
その時、アイスクリームを意欲的に手に取らなくなると、あれ? もう冬かも?、と、思う。
 毎週火曜日に新作のアイスクリームが出ても、夏場なら悩みまくって、あわよくばストックも買おうと思っていたのに、そんな感情がわかなくなった。

 肉マンやおでんに目が行く、ホット飲料を買う……それはもう、冬の感じが強いけど。
アイスクリームを積極的に買わなくなった、が、個人的冬のはじまりである。

【冬のはじまり】

11/28/2022, 11:36:48 AM

 私の主は、創作家である。
特に、恋愛小説を書いている。
 私は、今、主の書いている小説のヒロイン。
ただ、ここ1ヶ月程更新がない。

 スランプなのかな?

 現在、主人公の男の子と喧嘩をしてしまい、お互い好きだけどすれ違っている最中。
 早くあの子に謝りたいのに! そして、あの子と付き合いたいのに! 主は一体、何を戸惑っているの!?
 教室の窓際の席で、ぼんやりとあの子の事を思い続けながら早1ヶ月……。

「もうこの体勢飽きたね……」
 教室の黒板を穴があくくらい見つめている、隣の席の女の子が、口だけ開いた。
「あなたもずっと空ばっかりみてて、首疲れるでしょ?」
「作品が更新されないとずっとこのままだから……仕方ないよ……」
 そして、この恋も、このまま進展しない。
「知ってる? うちらの主の作者、今別の執筆始めて、そっちに集中してるらしいよ?」
「え?」
 私は頭を動かさず、信じられない、と言ったように声を出した。
「このままうちらの設定忘れて、うちらのこと忘れちゃうかもね」

 私の頭の中が真っ白になった。何も言えない。
それじゃあ、この私の恋は喧嘩をして終了? 何もなかったことになるの? 私、この作品のヒロインだよね?

 嫌だ、終わらせないで。
お願い、主! 私達のことを作ったのは主だよね?
ちゃんと最後まで描いて! こんなところで終わらせないで!
 未完の私達のことを! 作品であなたの帰りを待っている登場人物のことを! 忘れないで!


【終わらせないで】

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