喜村

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 夜明け前が一番の闇だと、どこかで聞いたことがある。
 今から朝という清々しい幕開け前の、早朝5時頃。
今までの夜の暗さよりも、更に闇は深くなっていた。
 今から朝という光が差し込むというのに、最後の悪あがきのように、深くなる闇。

 このまま飲まれてしまう。そう思った時に、段々と空が白んでいくのだ。
 夜と朝が共存できないように、光と闇も共存できないのだろう。

 でも、逆の時間帯に、その共存の時間帯がある。

 夕方だ。
闇が深くなる前、じんわりと光が最後の一力をだすかのように、段々と闇に溶けて行く。

 夜明け前は、お互いの主張が激しい闇と光ではあるが、夕方は光と闇のうまく共存できている狭間なのかもしれない。

 そして人は、その狭間の時間帯をえらく気に入っている。
闇に染まりたくない、光に飲まれたくない。
 もしかしたら、人は皆、未完のものと言われているゆえんもそこにあるのではなかろうか。
どちらにも染まらず、完成はしない、染まりきれない狭間。
光と闇の狭間で、私たちは生きているのでは、と。


【光と闇の狭間で】

12/2/2022, 11:54:47 AM