俺には、夢があった
勉強できて、運動神経抜群で、誰からも愛される
そんな人になりたかった
毎日毎日人だかりで
「キャー!
アキラー!こっち向いてぇー!
キャー!カッコいいー!」
と、あちこちから惚れ惚れした溜め息が漏れてくる
そんなアキラの姿を日々見てると
『俺も仲間に入れて欲しい!』
と、思う時が、何度も訪れた
声をかけたかった
友達でもいい、知人でもいい、顔見知りでもいいから──
けど、できなかった
勉強はできない、運動音痴で、誰からも愛されない
『何を口実に話せばいいんだ?
何もかもが正反対の俺が、アキラの仲間になったって
アキラの面子が丸潰れになるだけじゃないか
俺には、仲間になる資格がないんだ……』と
毎日毎日、たった1人で昼食を摂った
それを見ていた周りからは
「フフッ
アキラとは正反対ね」
と、指を指されて笑われた
ある日、耐えかねた俺は
仲間になれないことを、母に相談した
けど……
「今更、何言ってるの?
もう中学1年でしょ?
そんなことより、進路を早く決めなさい
自分で考えられるでしょ?」
と断られた
母の言葉は胸に突き刺さった
したくてしてきたんじゃない!
正反対のこの屈辱を、この俺自身を
俺は、毎日毎日我慢して耐えてきたんだ!!
自分で考えても分からなくなったから、相談したのに──
俺は
『苛められてないだけ、まだマシか』
と、その後も1人で自分を励ましていた
ー仲間になれなくてー
傘も指さずに、雨に打たれながら佇む君
何をしてるのだろう……
声をかけようとしたら、君は振り返った
泣いていた
泣き声が聞こえないように
誰にも心配かけないように
迷惑かけないようにと
人気のな居場所を敢えて選び、泣いていたらしい
「どうしたの?
何かあった?」
居たたまれず、声をかけた
「いい
話したって、どうにもならないことだから」
君はまた、遥か向こうを振り向いて
声を殺して、再び泣き続けた
何も出来ない
その悔しさに苛まれ
悔やんでも悔やみきれずに、泣いてるのだろう
辺りの雨は、まるで君自身の心を映したかのように
暗く荒んで、荒々しかった
君の心に
希望の灯火となる晴れ間が訪れますように……
俺は、願うしかなかった
ー雨と君ー
ふと目が覚めると
周りには誰もいなかった
窓から吹き込む風が
カーテンを揺らす
涼しい秋風に
心寂しくなる
「夏も終わりか
残り、あと半年……」
卒業まで何を残せるだろう──
残りの歳月を指折り数え
何も残せていない自身に
物悲しくなった
ー誰もいない教室ー
突然、体は走り出した
けど、心は「止まれ」と悲鳴を上げている
体と心がバラバラ
なぜ信号を出さない?
助けを求めれば、救えたかもしれないのに
ー信号ー
彼女が泣いていた
好きな人に振られたんだとさ
振られてから、三日三晩泣き続けてるらしい
涙が頬を伝い
肩をヒクヒクさせながら、泣き続ける彼女
俺は、言い出せなかった
「俺は、君の事、悲しませたりしないよ」と
ー言い出せなかった「」ー