ヤケザケ

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11/26/2025, 1:13:23 PM

時を繋ぐ糸


押入れへ隠れ、戸の外に糸電話の一方を投げる。
真っ暗な中、戸の隙間から光が漏れた。
糸電話の糸がピンと張られる。

「もしもし」
「久しぶり、元気だった?」

糸電話特有のくぐもった声がいい。
そちらはいつ? あなたは本物? 頭をかすめる疑問にノーを突きつける。
なんだっていい。声さえ聞ければ。

戸を開けてしまうと、糸がたわんでしまうのだから。

10/2/2025, 1:35:37 PM

遠い足音

いつも隣にいたはずなのに。
私のせいだよね、ごめん。

気まずい思いをさせるくらいなら、
何も言わなければよかった。

2/14/2025, 12:21:36 PM

『ありがとう』

 現地での言葉はわからないけれど、どうか伝わって。
 身ぶり表情。手を合わせる。お辞儀。
 習慣が違うのはわかっている。 
 それでも。

2/13/2025, 1:48:45 PM

『そっと伝えたい』

そっと伝えたい。
君の肩にカマキリが乗っていること。
いい写真になりそうだから、カメラを構えて。

2/12/2025, 1:10:01 PM

『未来の記憶』

「未来の記憶をお売りしますよ」
 と仮面の人が言った。
「それは有益なんでしょうね」
 尋ねると、仮面の人は首をかしげた。
「それは人によります」
 ともあれ、買ってみることにした。
 後で話のネタになると思えば、金額はそう高く感じなかった。
 記憶の種なるものをひとつまみし、口へ放り投げる。ほんの少し苦味を感じた。

 肝心の記憶といえば、平凡なものだった。病院らしきベッドで横たわる自分。しわくちゃな手を握りしめている誰か。遠くなっていく意識。

 意識が戻ってきて、仮面の人に感想を言った。特に予想外の面白いところはなかったと。
「未来の記憶は推理小説でいえば、犯人がわかるところを読むようなこと。恋愛映画でいえば、二人が結ばれているシーンを観るようなもの。普通の人は最期のシーンになるんでしょうねぇ」
 人生は物語のようなものではない。劇的な人生でなかったことを、むしろ良かったと思うべきなのだろう。
 平凡な人生の幕引きに少し安堵した。

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