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10/15/2024, 8:45:39 AM

秋の空は高く。

澄んだ青空がだんだんと色付いて

建物の影と鳥の影とコントラストを生み出していく。

金木犀の香り。

高く高く、広がる空に感傷的になるのはどうしてだろう。

何か哀しい事があったわけではない。
何か悩んでいるわけでもない。
ご飯は美味しいし、日々は楽しい。
でも、駆け抜ける毎日の中、ふっ、と
見上げた秋の空の高さに
戻れない瞬間を想ったり
もう会えない人を望んだり
この空を見せたい人を思い浮かべたりしてしまうのは。
自分が大人になったからだろうか。
子供の頃はどこまでも続くような高い高い空が
冒険心を掻き立ててくれたものだけれど。

涼しい風が、ふわりと葉を巻き上げる。
高く、高く。
つられて視線を上げた空に浮かぶ大きな白い月。

繰り返す季節を思う。
もうすぐ星や月が綺麗に見えるようになるな
イルミネーションも始まるのか。
あっという間に春になって
桜が咲いたら夏が来て。
若葉が芽吹いたら…。

1年の終わりに向かう毎日の中、この高い空をあと何度見れるのか想像する。
あぁ、そうか。
季節が過ぎていくことそれ自体が寂しいのか。
秋の高い空を見て感傷的になる。
あまりに短い秋が過ぎ去っていく。

高く高く、月が昇る。

過ぎていく日々を愛おしく思う。

10/13/2024, 11:42:01 AM

夏祭りの音が微かに聞こえる。
鬼雨の中を走った服は既に乾いてきていて、
遠くに見える雷雲が起こす風が体に心地よい。
お祭りのくじで当たったみかん飴には蟻が落ちていて
食べられなかった。
ヨーヨーも光るペンダントも、バルーンも買わなかったけど、子供みたいに。
小学生に戻ったみたいにはしゃいで遊べたことが
嬉しくて楽しくて、儚くて。
ほんの少し寂しくて。
戻れないあの頃を、目を細めて見つめてる。
子供みたいに遊べても、もう子供には戻れない。
「子供」ではなくて「大人」が「子供みたい」に
はしゃいでるだけ。
「また来年。来ようね。」
そういった友人とはそれ以来疎遠だ。
お互い仕事が忙しくて。人間関係の難しさに辟易して。
疲れてしまって。
今となっては子供の頃より、子供みたいにはしゃいだあの日が懐かしく、輝かしく。
戻りたいと願うのはひと夏の子供ごっこのあの日だ。
記憶の中で一際柔らかな煌めきを放つあの夏だ。

寂しく、強く、脆いものだね、大人というのは。

10/13/2024, 1:04:12 AM

階段の踊り場、差し込むオレンジ色の夕陽。
遠くから聴こえる吹奏楽部の奏でる音色。
笑い合う学生の声。
卒業式を終えた最後の放課後。
3年間で1番印象深かった化学の授業を思い出しながら
この学校で良かった、と自分に言い聞かす。
色々あったけど、ここで、これで、良かったんだ。

ロッカーを片付けて、下駄箱を軽く掃除して
もう足を踏み入れることの無い後者を振り返る。
傾いた夕陽が影を扉の方まで伸ばして
まるで名残惜しい、と言うように縋りついて見える。

「じゃぁね」

良い事も悪い事もここに置いていこう。
眩しい青春の光よ。思い出をよろしく。
何年後か、思い出す放課後がこんな美しい夕陽だといい。