夏祭りの音が微かに聞こえる。
鬼雨の中を走った服は既に乾いてきていて、
遠くに見える雷雲が起こす風が体に心地よい。
お祭りのくじで当たったみかん飴には蟻が落ちていて
食べられなかった。
ヨーヨーも光るペンダントも、バルーンも買わなかったけど、子供みたいに。
小学生に戻ったみたいにはしゃいで遊べたことが
嬉しくて楽しくて、儚くて。
ほんの少し寂しくて。
戻れないあの頃を、目を細めて見つめてる。
子供みたいに遊べても、もう子供には戻れない。
「子供」ではなくて「大人」が「子供みたい」に
はしゃいでるだけ。
「また来年。来ようね。」
そういった友人とはそれ以来疎遠だ。
お互い仕事が忙しくて。人間関係の難しさに辟易して。
疲れてしまって。
今となっては子供の頃より、子供みたいにはしゃいだあの日が懐かしく、輝かしく。
戻りたいと願うのはひと夏の子供ごっこのあの日だ。
記憶の中で一際柔らかな煌めきを放つあの夏だ。
寂しく、強く、脆いものだね、大人というのは。
10/13/2024, 11:42:01 AM