暗い絹糸で何層にも重なったベールに向かって車を走らせる
街灯もない山道を超え、トンネルに入る
腐れ縁が突然家に訪れ、連れられた
言葉を組み合わすでもなく、車を走らせる
トンネル照明を爪に反射させ、雨にして遊ぶ
どうせなんかあったんだろ
昔からなんかあれば俺の事情は構わず連れられる
トンネルは長く窓を見てもコンクリの壁だけ
棒人間もジャンプしがいが無い
グローブボックスへ乱雑に押し込まれた煙草箱を取り、火をつける
窓を開け、少し冷え込んだ空気が煙草火を燃やす
まだ出口は見えず、トンネルはまだ
「夜明けの先」
「……サイテー」
その吐きゼリフと共に頬を叩かれる
ヒリヒリとした感覚を感じながら
あぁ……少女漫画みたい……と他人事のように感じる私がいる
私は女のコが好きだ
自他ともに認める女好き
男とも付き合ったことが無いわけでは無いが
如何せん硬いので興味がそそられない
この子も雰囲気からしてもふんわり、見た目からしてもふわふわした『かわいい女のコ』
好きだ いいね好みど真ん中 付き合う? 付き合った
ロングが好きだ ロングにしてくれたの? かわいいね
かわいい子が好きだ うわ、かわいい服 似合ってんね
私のため 努力してくれる かわいい
…でも、どうしても好みじゃないあの子が
忘れられない
絶対に自分を自分として軸を持ってるあの子
そこに居ない 分かってる
けど、無意識に 探してる
頬を叩かれる感覚
あぁ……最低分かってる…私が1番知ってる
努力してくれたのに、どうしても本気になれない
最悪だよ 私は
あの子がどうしても記憶から離れられない サイテーだ
『本気の恋』
甘くどろりとした
春翔けるそよ風のような
息出来ぬ水
『甘い重圧』
じいちゃんに肩車してもらった
初めて天井が手に触れた
空みたいだったのに
あんなに遠かった天井に初めて触れた日に戻りたい
やっと手に入れられる
ダンジョン降下 階層666層目
長年に渡って求めてきたもの
冒険者として
王族からは何の見返りも貰えずに駆り出され、市街で厄介者扱いされることもあった
でも、3人の仲間と共に楽しかった
飯食って、寝て、戦って、失恋して、慰めて、喧嘩して
ずっとそれでよかった
関わったこともない王も倒した
なのにアイツは仲間を殺した
お前は最弱 野垂れ死ねと
仲間の死を無には返さない
アイツこそ
長年探していた人族が使うと記された聖剣
ワタシも身体がいずれ溶け、無に消える
だが、ワタシは魔族として アイツを 魔王を滅ぼす
何があろうと 絶対に
『この道の先に』