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3/7/2025, 4:59:56 PM

ㇻ今ㇻ


髪は指を離さず、絡め取る
最後に風呂入ったのはいつだったか
嫌な脂がついた指で薄汚れた紙箱を開ける
幸運なことに手に入った煙草を咥える 
本当に奇跡だ これだけは感謝しといてやろうカミサマ
ポッケに詰め込まれたゴミの中からマッチ箱をとる
カラッと軽い音がする 
丁寧に火をつけ、白い煙が部屋に広がる

生暖かい空気と煙
3年前の日付が印字された新聞  
    [今が崩れる]
老眼でもありがたくデカデカと書かれている
 突然だった 
なんの前触れもなく、ただ淡々と人は消えていった
朝起きる 商店街の靴屋のおっさんが消えた
朝起きる ニュースキャスターが消えた
朝起きる おちゃらける近所のガキンチョが消えた
朝起きる 友人が消えていた

どうすることもできなかった
周りの人は消えた
電気も水もメシもない
自然に帰りだした街を駆け回る 
部屋にゴミだけが増える
なんで俺だけなんだろうか なんでこんな
俺は何故まだここに居るんだろうか

部屋中に散らばったゴミ山にマッチを捨てる
古びた新聞に火がつき、焦げた紙が部屋を舞う
ヤニがついた畳に広がる
煙草はもう短い


ㇻㇻㇻ

9/13/2024, 6:41:02 PM

暗い絹糸で何層にも重なったベールに向かって車を走らせる
街灯もない山道を超え、トンネルに入る
腐れ縁が突然家に訪れ、連れられた
言葉を組み合わすでもなく、車を走らせる

トンネル照明を爪に反射させ、雨にして遊ぶ
どうせなんかあったんだろ
昔からなんかあれば俺の事情は構わず連れられる
トンネルは長く窓を見てもコンクリの壁だけ
棒人間もジャンプしがいが無い

グローブボックスへ乱雑に押し込まれた煙草箱を取り、火をつける
窓を開け、少し冷え込んだ空気が煙草火を燃やす
まだ出口は見えず、トンネルはまだ



「夜明けの先」

9/12/2024, 5:25:50 PM

「……サイテー」
その吐きゼリフと共に頬を叩かれる
ヒリヒリとした感覚を感じながら
あぁ……少女漫画みたい……と他人事のように感じる私がいる

私は女のコが好きだ
自他ともに認める女好き
男とも付き合ったことが無いわけでは無いが
如何せん硬いので興味がそそられない

この子も雰囲気からしてもふんわり、見た目からしてもふわふわした『かわいい女のコ』
好きだ いいね好みど真ん中 付き合う? 付き合った

ロングが好きだ ロングにしてくれたの? かわいいね
かわいい子が好きだ うわ、かわいい服 似合ってんね
私のため 努力してくれる かわいい

…でも、どうしても好みじゃないあの子が
忘れられない
絶対に自分を自分として軸を持ってるあの子
そこに居ない 分かってる
けど、無意識に 探してる

頬を叩かれる感覚
あぁ……最低分かってる…私が1番知ってる
努力してくれたのに、どうしても本気になれない
最悪だよ 私は
あの子がどうしても記憶から離れられない サイテーだ



『本気の恋』

8/2/2024, 6:27:02 PM

甘くどろりとした
春翔けるそよ風のような
息出来ぬ水

『甘い重圧』

7/22/2024, 11:46:27 AM

じいちゃんに肩車してもらった
初めて天井が手に触れた
空みたいだったのに
あんなに遠かった天井に初めて触れた日に戻りたい

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