受験生

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11/5/2025, 7:31:45 AM

金木犀の時期になると彼女を思い出す。
同じ年数を生きてるはずなのにどこか寂しげだった彼女の顔をもう思い出すことは出来ないけれど、彼女が笑うといつも金木犀の香りがした気がした。
彼女の教えてくれた金木犀の花言葉は素敵なものだった気がする。
秋が来るとまるで金木犀が主役だと錯覚してしまうほど心地の良い香りと綺麗なオレンジの花を満開にする。
でも金木犀は雨が降るとたちまち酷い匂いがする
鼻を刺激するその匂いは晴れの姿を忘れさせるほど惨めに見える。
彼女もきっとそうならいい

11/3/2025, 3:03:00 PM

「行かないでと、願ったのに」

1944年の冬だったと思う。笑った顔が綺麗な人だった
笑うと片方にだけエクボが出て、眉が困り眉になるのが印象的だった
その笑った顔が痛いくらい刺さる。貴方の口から聞きたくない言葉だった「わし、戦地に行くことになったんじゃ。ありがたいことじゃ、お国のためにこの命、尽くしてくるけえの。」自惚れだった。このまま選ばれずに争いは終わるんじゃないかなんて確信の無い期待をずっと胸に抱いてた。何を言えばいいか言葉に詰まった。「無事でいてくれ」「行かないで」そんな言葉が脳内をグルグルと巡る。国の招集に対してそんなことは思っては行けない。お国のために死ぬことは美しいこと。それを分かっているからこそ何を言えばいいのか分からない。「健闘を……祈ります」考えた結果出た言葉がコレかと心底自分を否定したくなった。ぐしゃぐしゃな顔を見せる私に反して貴方はその綺麗な顔で笑ってくれた。
その数日後、貴方はお国のために身を燃やした。帰ってきた貴方の服には大きな日の丸が着いていた。最初から無事なんて祈っても意味がなかった。私を置いて先に空に散った貴方と次に会えたのはほんの数カ月後だった。