「行かないでと、願ったのに」
1944年の冬だったと思う。笑った顔が綺麗な人だった
笑うと片方にだけエクボが出て、眉が困り眉になるのが印象的だった
その笑った顔が痛いくらい刺さる。貴方の口から聞きたくない言葉だった「わし、戦地に行くことになったんじゃ。ありがたいことじゃ、お国のためにこの命、尽くしてくるけえの。」自惚れだった。このまま選ばれずに争いは終わるんじゃないかなんて確信の無い期待をずっと胸に抱いてた。何を言えばいいか言葉に詰まった。「無事でいてくれ」「行かないで」そんな言葉が脳内をグルグルと巡る。国の招集に対してそんなことは思っては行けない。お国のために死ぬことは美しいこと。それを分かっているからこそ何を言えばいいのか分からない。「健闘を……祈ります」考えた結果出た言葉がコレかと心底自分を否定したくなった。ぐしゃぐしゃな顔を見せる私に反して貴方はその綺麗な顔で笑ってくれた。
その数日後、貴方はお国のために身を燃やした。帰ってきた貴方の服には大きな日の丸が着いていた。最初から無事なんて祈っても意味がなかった。私を置いて先に空に散った貴方と次に会えたのはほんの数カ月後だった。
11/3/2025, 3:03:00 PM